NOMISMA SCHOLA

品位と改鋳

B03 — 横断テーマ

品位と改鋳 — 科目の口絵

「同じ一枚」の中身が、静かに減っていく。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: 科目本文 約 8 分 + 教本 約 32 分 = 約 40 分 / 本文のほかに、演習 12 問・実物 6 点・読む教材 12 停・参考文献 2 件

この科目で、できるようになること

  • 品位低下がどの順番で進むかを、段階に分けて説明できる。
  • 「改鋳」に、下げる改鋳と戻す改鋳の二種類があることを見分けられる。
  • 品位を下げた国が、そのあと何に困ったかを言える。
  • 品位の記載値と、実際に流通した貨幣の中身を、別のものとして扱えるようになる。
  • ローマ・ドイツ・日本の事例を、第1〜3節の「順番」の上に置いて説明できる。
  • 試金石・ギザ縁など、品位の偽りを見分ける技術を時代順に言える。

教本 — TEXTBOOK

『品位と改鋳』 First Edition(2026)

一冊まるごとの図版教本。図版 17 点・読了の目安 約 32 分

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レッスン(8節)

  1. 段階を踏んで下がる。一度では下げない下げるときは気づかれないよう段階的に、戻すときは信用を取るため一度に。
  2. 悪貨は家に居場所がないゆえに、世界を歩く良貨は隠れ、悪貨は旅をする。広く流通したことは、質の証明にならない。
  3. 下げた国が、そのあと困ること「改鋳」には下げる改鋳と戻す改鋳がある。同じ語で呼ぶので、読むとき区別する。
  4. 同じ失敗が、どこで何回起きたか失敗の記憶が新しいうちに作った法は、効く。ただし件数は、出来事の数ではなく記述の量。
  5. ローマ — 二百年あまりの、長い坂一段の切下げより、戻れなかった二百年あまりが本体。時間が代償の大きさを決める。
  6. キッパー・ウント・ウィッパー — 秤が揺れた時代悪鋳が競争になると、坂は崖になる。「少しずつ」は独占の贅沢。
  7. 元禄と正徳 — 下げた言い分、戻した代償戻す改鋳の代償は費用だけではない。質を戻すと量が締まり、景気が縮む。
  8. 見分ける技術 — 試金石からギザ縁まで見分ける技術が上がるほど悪鋳の余地は狭まる。検出の遅れは最後に国家が払う。

ケーススタディ — 教材で使う(12)

  • 大改悪 イギリス 1544〜1551年 ロンドンの造幣所
    第1節の図の出どころ。段階を踏んで下げる様子を原文で確かめてください
  • 獅子の銀貨、世界へ オランダ 1575年〜 低地の港
    第2節。悪貨が旅に出る理屈が、いちばん明快に書かれています
  • 1792年鋳貨法 アメリカ 1792年 鋳貨法、罰則の条文
    品位を落とせば死刑、という条文。なぜそこまで重くしたのかを、直前の失敗と繋げて読んでください
  • 撰銭の世 日本 1485〜1500年 大内の城下と京
    日本の撰銭令。人々が貨幣を選り分けはじめたとき、権力が何をしたかの記録です
  • ローマ属州ガリアの貨幣 フランス 後1〜3世紀 帝国の造幣工房
    第5節の数値の出どころ。ほぼ純銀から二パーセントまでの二百年あまりが、一つの段落に入っています
  • キッパー・ウィッパー ドイツ 1619〜1623年 諸領邦の両替の店先
    第6節。時代の名になった二つの動詞と、店先の秤の情景
  • 改鋳の世紀 日本 1714年 江戸
    第7節。品位を戻した側の代償が、いちばん率直に書かれています
  • ニュートンの大改鋳 イギリス 1696年 ロンドン塔の造幣所
    第8節。検出が遅れた国が最後に払った費用。ニュートン登場の前夜
  • 改鋳の世紀 日本 1695年 江戸
    第7節の数値の出どころ。八十七から五十七へ——触書の一行が動かした量の大きさを、原文で
  • 南へ、海へ(2) ポルトガル 14世紀後半 王の造幣所
    税を上げれば議会と揉め、品位を落とすのは王の一存で済む。この手が選ばれる理由が、王の側の勘定として書かれています。名を変えなかった理由の一行も見てください。
  • 胸像の王 メキシコ 1772年〜 スペイン王室
    一四九七年の王令以来の品位が、一七二八年と一七七二年に引き下げられ、しかも公表されませんでした。世界が同じ品位を信じ続けている裏側で何が起きていたかを、分数のまま読んでください。
  • 楡の実のように軽い 中国 前206〜前180 漢初の市場
    政府が民間の鋳造を認めた結果、誰も違法なことをしていないのに銭が痩せていきました。面には半両と書いてあるのに手に取れば軽い、という状態がどう生まれるかを読んでください。

評価方法

科目内の演習 12 問(確認 7・比較 1・記述 4)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

  • Isaac Newton, Warden and Master of the Royal Mint 1696-1727 — The Royal Mint Museum 1696年の大改鋳の一次的な解説。ニュートンは1696年に監事、1699年から死去(1727)まで長官。量目と品位の正確さを重んじ、3年で改鋳を完了させた
  • 日本貨幣史 — 日本銀行金融研究所 貨幣博物館 古代(7世紀後半〜)から近代までの時代別解説。和同開珎以前の商品貨幣、渡来銭とびた銭、江戸の貨幣単位と交換相場、円の誕生と金本位制

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。