NOMISMA SCHOLA

通貨の消滅

B16 — 横断テーマ

通貨の消滅 — 科目の口絵

通貨は、三つのやり方で殺されます。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 9 分(本文 4,725 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 11 問・実物 4 点・読む教材 17 停・参考文献 1 件

この科目で、できるようになること

  • 通貨が消えるときの四つの型を、実例を挙げて言い分けられる。
  • 市場が受け取りを拒むことで消えた例を、権力の強さと切り離して説明できる。
  • 布告による無効化が、なぜ「没収」と語られやすいのかを説明できる。
  • 誰も禁じていないのに貨幣が消える条件を、自分の言葉で述べられる。
  • 内戦・分断による通貨の分裂と、勝者による決着の型を実例で説明できる。
  • フェアルーフング(定期的な貨幣の更新)の仕組みと狙いを説明できる。

レッスン(8節)

  1. 消滅は、どの国にも起きている消滅は事故ではなく通常の出来事。八編すべてに例がある。ただし件数は書き手の関心も映す。
  2. 市場が受け取らなければ、王でも殺せない受け取りを拒まれた貨幣は、誰にも禁じられないまま消える。決めるのは発行者ではなく受け取る側。
  3. 布告が殺す ── 一夜で無効になる日布告は貨幣を無効にできる。ただし猶予の長さが結果を変える。制度の設計と体験は別に書く。
  4. 誰も殺していないのに、死ぬ行為者のいない消滅がある。貨幣は、それを必要とする仕組みが消えれば、誰にも殺されずに死ぬ。
  5. 裂ける通貨 — 内戦と分断戦線が国土を分けるとき、貨幣も裂ける。決着は勝者の布告で言い渡される。
  6. 定期的に死ぬ貨幣 — フェアルーフング持っているだけで目減りする、貯め込みに罰のかかる貨幣が、中世ドイツに実在した。
  7. 廃止という夢 — お金を消そうとした実験革命政権はお金の廃止さえ夢見た。七十年の実験は、帝国とともに幕を閉じた。
  8. 死後の生 — 名前と約束と収集品通貨は三つの形で死後を生きる。名前の中で、交換約束の中で、そして収集品として。

読む教材(17)

  • 失敗した金貨 イギリス 1344年 ロンドンの造幣所
    第2節。受け取りを拒まれた金貨。数か月で終わりました
  • 封鎖と二つのマルク ドイツ 1948〜1949年 ベルリン、東西の境
    第2節。公式の比率と闇の相場の差を確かめてください
  • 三貨の天下 日本 1668〜1670年 江戸 亀戸村
    第3節。禁止の前に何をしたかに注目してください
  • 十グルデンの一週間 オランダ 1945年9月 解放後の街、配給の窓口
    第3節。一週間を一枚で暮らす場面です
  • 十グルデンの一週間 オランダ 1945年 銀行の窓口、申告の秋
    第3節。⚠「没収された」という語られ方への訂正。この科目の核です
  • 日本 総論・世界2700年 後 1946年 新円切替
    第3節。同じ手が日本でも行われました
  • インド 総論・世界2700年 後 2016年 高額紙幣廃止
    第3節。猶予が一夜だった場合に何が起きるか
  • 封鎖と二つのマルク ドイツ 1948年 ソ連占領地区との境
    第3節。通貨の分裂が国家の分裂に先立った例です
  • 内戦 スペイン 1936年 二つに裂けた半島
    第3節の裏。相手の紙幣を持つことが罪になりました
  • 内戦 スペイン 1939年 戦後の半島
    第3節の裏。敗者の貨幣がたどる運命です
  • 貨幣が消えた島 イギリス 5世紀 廃れゆく属州の町
    第4節。行為者のいない消滅。この科目の結論です
  • ロシア 総論・世界2700年 後 1917年– お金を眠らせた実験
    第4節。貨幣を無くそうとして、結局は作り直した実験です
  • ブラクテアート ドイツ 12〜13世紀 領邦の市の広場
    第6節。貯め込みに罰のかかる貨幣。現代の常識を裏返す掟の全文
  • ユーロへ スペイン 現在 マドリード、太陽の門
    第8節。名前の中の死後生。編の結びの一段落
  • 交換を約さない紙幣 中国 15〜17世紀 帳簿だけに残る額面
    法の上では生きていて、市では死んでいる。誰も殺さないまま二百年そのままだった紙幣と、廃止しないほうが穏やかだった理由が書かれています。
  • 十を一に 韓国 1962年 切替の窓口
    箪笥に眠る現金をあぶり出すために設計された切替が、狙いを果たせなかった記録です。中央銀行自身が、そう書き残しています。
  • 白金の貨幣 ロシア 1845年 サンクトペテルブルク
    十七年で廃止された白金貨の、その後です。回収されたものの多くは溶かされ、貨幣であることをやめた金属がどこへ行くのかが書かれています。

評価方法

科目内の演習 11 問(確認 8・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。