NOMISMA SCHOLA

名目と実質

B04 — 横断テーマ

名目と実質 — 科目の口絵

額面に「二朱」と書いてある銀貨。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 3,827 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 10 問・実物 6 点・読む教材 11 停

この科目で、できるようになること

  • 名目価値と実質価値の差を、具体的な一枚で説明できる。
  • 「額面が金属の量から離れる」ことが何を可能にするかを言える。
  • 布告で額面を動かす手口の、狙いと副作用を説明できる。
  • 債権者と債務者のどちらが得をするかを、貨幣の動きから判断できるようになる。
  • 「額面の膨張」の実例(当百銭・天保通宝)を、その帰結まで含めて説明できる。
  • デノミ・廃貨・法定通貨化を、名実の距離の操作として統一的に読める。

レッスン(8節)

  1. 額面と中身が、離れる実質価値と名目価値は離れられる。離れられるから少額貨幣が作れる。問題は離れすぎたとき。
  2. 布告ひとつで、額面は動く額面の引き上げは、しばしば中身の減量と対で行われる。良い知らせで包まれた減量を見抜く。
  3. 実質で暮らす人と、名目で暮らす人貨幣が薄くなると、債務者が得をし、債権者が損をする。制度の議論は立場の議論でもある。
  4. 国そのものが、名目と実質のあいだで動く名目の勝敗と実質の損得は一致しない。「勝った」という記述を見たら、帳簿を確かめる。
  5. 百倍の額面 — 東アジアの二枚の大銭額面は布告で百倍にできるが、中身は布告では増えない。乖離の分だけ、あとで市場が請求する。
  6. ゼロを消す — デノミという外科手術デノミは価値を変えず、名目の目盛りだけを変える。目盛りが暴走した後始末の外科手術。
  7. 名目の国境 — 条約第五条の隙間「同じ種類を同じ量で」という一文が、名目の国と目方の世界の断層を直撃した。
  8. 千年かけた名目の勝利商人の紙から、法の紙、そして金の窓の閉鎖へ。名目の勝利は千年がかりの長い戦役だった。

読む教材(11)

  • 改鋳の世紀 日本 1772年 江戸
    第1節。銀貨に金の単位が書かれた場面。額面が中身から離れる設計です
  • 太陽王の金が溶ける フランス 1683〜1715年 パリの造幣所
    第2節。二段構えの手口が、そのまま書かれています
  • キッパー・ウィッパー ドイツ 1619〜1623年 物価高騰の町
    第3節。賃金を貨幣で受け取る人が実質で崩れる場面です
  • 一九一四 イギリス 1914〜1918年 大西洋の両岸
    第4節。勝者が債務国になる。名目と実質の乖離が国の規模で起きます
  • 韓国 総論・世界2700年 後 1866年 当百銭の失敗
    第5節。額面百倍・中身五、六倍。乖離の算術がいちばん短く書かれた一段落
  • 重いフランと金の執着 フランス 1960年 フランスの商店
    第6節。ゼロを二つ消した日。デノミの実務と象徴の両面
  • 黒船と金の流出 日本 1858年 下田 アメリカ領事館
    第7節。「一人の悪意に話を畳んでしまうと、何も見えません」——構造で読む姿勢の手本
  • 南北戦争 アメリカ 1862年 ワシントン、連邦議会
    第8節。法の力で通用させる、という名目の第二の勝利の条文
  • 貨幣のほうを、作り替えた インド 1329〜1330年ごろ 王の決断
    代用貨幣を出した国が、家で打たれた偽造分まで金貨と銀貨で引き取り、国庫が枯れた場面です。額面を決めるのは国でも、額面を信じさせるのは国ではない、という一行まで読んでください。
  • 変えないという発明 イタリア 14〜15世紀 商館の帳場
    手の中の金貨と、帳簿の上のフローリンが別の道を歩きはじめます。二十年使われた一枚と昨日打たれた一枚の差を均すために、実物ではなく理想の一枚が要った経緯です。
  • 銀が出ていく 中国 1820〜1850年 銅銭を数える店先
    税は銀で計算し、暮らしは銅銭で払う社会の話です。法を一行も変えないまま負担が重くなる仕組みを、比価そのものが税になる、という一文で押さえてください。

評価方法

科目内の演習 10 問(確認 7・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。