NOMISMA SCHOLA

偽造

B10 — 横断テーマ

偽造 — 科目の口絵

偽物は、本物のすぐ後ろから生まれます。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 10 分(本文 4,806 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 11 問・実物 5 点・読む教材 20 停・参考文献 1 件

この科目で、できるようになること

  • 偽造を防ぐ工夫が、なぜ「見た目」ではなく「見分けやすさ」を狙うのかを説明できる。
  • 縁のぎざぎざが装飾ではなく検査の装置であることを、実物を見て言い当てられる。
  • 国家自身が行った貨幣の質の切り下げを、私人の偽造と同じ物差しで比べられる。
  • 「偽造は犯罪者の問題」という言い方の、どこが足りないかを指摘できる。
  • 機械打ちの三つの守り(真円・粒の列・縁の刻み)を偽造対策として説明できる。
  • 「国家自身が偽造者になった」事例を、幕末維新の実例で論じられる。

レッスン(8節)

  1. 見分ける道具のほうが、先に要る貨幣は中身が見えない。見えないから信用でき、見えないから偽造できる。
  2. 削るという静かな犯罪と、その終わり方縁のぎざぎざは装飾ではなく検査の装置。犯罪は刑罰でなく設計で終わった。
  3. いちばん大きな偽造者額面と中身の差を懐に入れる構造は、王の悪鋳も私人の贋金も同じ。違うのは合法かどうかだけ。
  4. 信用を守るのは、刻印ではなく執行刑罰は威嚇にしかならない。効いたのは、見分けやすさを設計に組み込むことだった。
  5. 三つの守り — 機械という対抗真円と均一な重さ、粒の列、縁の刻み。機械打ちは削り取りを「見れば分かる」犯罪に変えた。
  6. 贋金師対科学者 — チャロナー事件史上最も有名な贋金師を追いつめたのは、万有引力の発見者だった。執行は人がやる仕事。
  7. 絞首台と紙 — 一枚の紙が命より重くなる紙の信用は刑の重さでは守りきれない。重罰の時代は、兌換停止が生んだ最も暗い風景。
  8. 国家という偽造者 — 幕末維新の帳簿薩摩の悪事と語られてきた贋金の、いちばん大きな鋳型は新政府にあった。帳簿は語りより正直。

読む教材(20)

  • 偽金の歴史 総論・世界2700年 二千七百年 偽物の誕生
    第1節。偽造が貨幣と同時に始まったという出発点です
  • 偽金の歴史 総論・世界2700年 古代 試金石
    第1節。見分けるための道具。噛む仕草の由来も出ます
  • 偽金の歴史 総論・世界2700年 中世–近世 クリッピング
    第2節。削り取りの被害の規模を確かめてください
  • 機械と革命 総論・世界2700年 後 17世紀 縁のギザギザ
    第2節。ぎざぎざが何のためにあるかの答えです
  • 柱のドル スペイン 1732年 メキシコ市造幣所
    第2節。縁の刻みが入った実際の一枚。量目の記載値に注目
  • 贋金王とテンプル フランス 1295〜1314年 パリの造幣所
    第3節。法の内側で行われた切り下げ。ダンテの評言まで読んでください
  • 幕末の政変と贋金 日本 1868〜1869年 江戸 金座
    第3節。図の数はすべてこの停留所の記載値です。届け出と見積もりの違いに注意
  • 幕末の政変と贋金 日本 1860年代 諸藩の藩邸
    第3節。諸藩の側から見た同じ出来事です
  • 大陸紙幣 アメリカ 1775〜1779年 ニューヨーク、英軍の占領地
    第3節。国家が敵の紙幣を偽造した例。年代の先後に注意
  • 偽金の歴史 総論・世界2700年 後 1942年 ベルンハルト作戦
    第3節。二十世紀の同じ手口です
  • ニュートンの大改鋳 イギリス 1699年 ロンドン
    第4節。執行の裏づけとは何かが分かる場面です
  • 紙のポンド イギリス 1797〜1821年 ロンドン・処刑場
    第4節。最も重い刑でも守れなかったという事実を確かめてください
  • 円の誕生 日本 1881年 紙幣寮 彫刻室
    第4節。肖像がなぜ偽造を防ぐのか、その理由が書かれています
  • 偽金の歴史 総論・世界2700年 現代 終わらない戦い
    第4節。現在の紙幣に積み重なった工夫の一覧です
  • ルイドールと機械打ち フランス 1640〜1672年 パリの造幣所
    第5節。三つの守りの原文。九十年の抵抗の終わりまで
  • ニュートンの大改鋳 イギリス 1696〜1727年 ロンドン塔とロンドンの酒場
    第6節。科学者が捜査官になった記録
  • 幕末の政変と贋金 日本 1869〜1871年 東京 高輪
    第8節。贋貨の後始末が国際の約束になった会談の記録
  • 検める人 ギリシャ 前375/4年 アゴラの両替台
    真贋の見極めを私人の目利きに任せず、国家が常勤の係を置いた最古級の法です。座る場所も、務めを怠ったときの鞭五〇打も、条文に書き込まれています
  • 貨幣のほうを、作り替えた インド 1329〜1330年ごろ 王の決断
    偽造に負けた側の後始末です。王は自分の名において出したものとして、家で打たれた偽の銅貨まで金貨と銀貨で引き換え、国庫が枯れました
  • 白いインフレ 韓国 1890年代〜 裏の工房
    政府が財政の穴埋めに鋳造の特許を売った先で、公認と闇打ちと偽造の境目が溶けていきます。同じ額面の顔をした貨幣が、どの炉から来たのか誰にも見分けられなくなりました

評価方法

科目内の演習 11 問(確認 8・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。