実物を読む
一枚のコインを、できるだけ近くから読みます。銘文、傷、打ち直しの跡。

使い方で分かれた黄金の行方
豊臣方は秀吉が遺した金銀を兵力に換え、徳川家康は全国で通用する貨幣制度を打ち立てました。同じ時代の金銀が、使い方によって正反対の結末を迎えるまでの道のりです。

二十円金貨が定めた円の価値
新貨条例で定められた最高額面の旧二十円金貨。一円を純金一・五グラムと対応させたこの貨幣の価値は、明治三十年に半分になります。その背景には、ロンドンに置かれたままの賠償金がありました。

時は飛ぶ、と刻まれた紙の運命
中央に「FUGIO(時は飛ぶ)」と日時計、その下に「MIND YOUR BUSINESS」。独立戦争の戦費を賄うために刷られた大陸紙幣は、その言葉とは裏腹に価値を失い、一つの慣用句を英語の中に残しました。

紙を信じまい、という記憶の硬貨
ジョン・ローの泡が弾けたあと、フランスの通貨は金属に帰りました。ルイ15世のエキュは、約半世紀続く安定の象徴でしたが、その一方で国の財政は破産へ向かいます。貨幣が静まった時代に、国を蝕んだものがありました。

太陽王の銀貨と空の金庫
1690年に打たれた一枚の銀エキュ。財務総監の改革で財政は一度黒字になったはずでした。それでもなぜ、フランスは貧しくなっていったのか。銀貨が生まれた背景を遡ります。

機械が打つ信用、柱のドル
王冠をいただく二本の柱が、二つの半球をはさむ。歪んだ銀のかたまりから真円の貨幣へ。縁に施された一つの工夫が、長く続いた病を終わらせ、世界に渡る信用の土台を築きました。

故郷に居場所のなかった銀貨
品位が低いゆえに故郷で嫌われた一枚の銀貨がありました。けれど、居場所がなかったからこそ旅に出て、東地中海から北米まで、世界にその名を刻みます。獅子を刻んだ銀貨の長い旅路です。

削られぬ金貨の精度と美
千六百四十年に生まれた金貨ルイドール。完璧な円形と芸術的な肖像には、金を盗む手口を封じる狙いがありました。一枚の貨幣が宿す、精度と美、そして富が生まれる裏側を辿ります。

ゼロを二つ消したフランの威信
1960年、フランスはゼロを二つ消した新フランを発行します。目指したのは「重いフラン」という威信の回復でした。一枚の貨幣に託された願いは、やがて世界の通貨秩序へ、そして顔のない市場へと挑むことになります。

王の身代金を数えた太陽の金貨
王権の輝きを宣言するために生まれた一枚の金貨。やがてその金貨は、囚われた王の身代金を数える単位にもなりました。ある金貨が映し出す、栄光と敗戦の二つの場面をたどります。

一枚も発行されなかった銭
昭和二十年、日本は土で銭を焼こうとしました。千五百万枚が窯から出て、一枚も発行されないまま戦が終わります。

戳記だらけの銀貨
打刻で王の顔が潰れた八レアル銀貨があります。その傷は欠点ではなく、検めを受けてきた回数の記録でした。

同じ通し番号の二枚
大英博物館に、同じ番号の五百エスクード札が二枚並んでいます。片方には無効の印が打たれています。