NOMISMA SCHOLA

出土銭の読み方

E3 — 土の中の統計

出土銭の読み方 — 科目の口絵

一括で埋められた貨幣の山を、ホードと呼びます。ホードはただの宝ではありません。その日その場所で流通していた貨幣の、偶然の標本です。誰かが埋め、掘り返せなかった。だから手つかずで残った。イングランドのペニーが国内よりスウェーデンで多く見つかる——貨幣が語る、支払いの実態です。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 4,143 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 11 問・実物 6 点・読む教材 11 停・参考文献 1 件

この科目で、できるようになること

  • ホードから読み取れることと、読み取れないことを分けられる。
  • 構成表の「最も新しい貨幣」が何を意味するかを説明できる。
  • ホードが偏った標本であることを、具体的に指摘できる。
  • なぜ埋めたかを問うとき、答えが出ない場合があると判断できる。
  • 主要なホードの発見が、それぞれ何を書き換えたかを言える。
  • 出土の分布から交易の広がりを読む型と、その限界を説明できる。

レッスン(8節)

  1. 構成表を、まず作る構成表を作る。何の幅が広いかで、そのホードが語れることが決まる。
  2. 最も新しい一枚が、時計になる年代を決めるのは最新の一枚(それ以降)。最古の一枚は、流通の寿命を示す。
  3. ホードは、偏った標本である残っているのは、持ち主が戻れなかったもの。ホードが多い時代は、人が戻れなかった時代。
  4. 答えの出ない問いを、出ないまま置く物から分かるのは、何が・何枚・いつまで。なぜ埋めたかは分からないことがある。
  5. 学問を書き換えた壺 — 三つの大発見大発見は偶然やってくる。だがそれを学問にするのは、枚数を数え、記録する手続き。
  6. 出土地図は交易図 — 北へ行った銀貨幣は自分の出土地で語る。本国より外に多く出るとき、そこには銀の流れがあった。
  7. 工房ごと、出土する — 飛鳥池の朝銭だけでなく、鋳型も坩堝も未完成品も出た。作る現場の出土が、議論の土俵を変えた。
  8. 記録と土のずれ — 焼け跡の金銀文書の数字と掘り出された物は、突き合わせてはじめて史料になる。ずれ自体が情報。

読む教材(11)

  • 撰銭の世 日本 14世紀末 / 1968年 蝦夷地 志海苔
    第1節・第2節・第4節の出どころ。志海苔の構成と、答えの出ない問いまで
  • 封建とヴァイキングの銭 フランス 10世紀初 イングランド北西、リブル川の岸
    第1節。六つの文化圏の銭が混じるホード。「すべてが貢ぎとは限らない」の留保に注目
  • マッサリアの銀 フランス 前6世紀末〜前5世紀 オーリオルのオリーブ畑(プロヴァンス)
    第1節。重さが0.15gから2.75gまで散らばる。規格が定まる前の姿です
  • 寺が銀行だった 日本 中世 鎌倉 由比ヶ浜
    第4節。六道銭。「それこそが、いま調べられていること」という書き方を
  • 簒奪者の造幣所 イギリス 3世紀・発見2010年 サマセットの野
    第5節。五万二千五百三枚という端数まで数えられた、物言わぬ台帳
  • デーンゲルド イギリス 10世紀末〜11世紀 スカンディナヴィア
    第6節。王のペニーが本国より北欧の土に多い——出土地図が語る銀の流れ
  • 壬申の乱 日本 7世紀後半 飛鳥池工房遺跡
    第7節。「教科書が書き換わった日」。工房まるごとの出土を原文で
  • 天下の値段 日本 1615〜1616年 大坂・久能山
    第8節。記録どうしで数が食い違う実例と、埋蔵金伝説への留保
  • 海亀の銀貨 ギリシャ 前550年頃(諸説) 埋蔵貨の壺の前
    文献の伝承に寄りかかっていた開始年を、土の中の証拠が引き下げました。何と一緒に埋まっていたかが年代の物差しになる、その道具立てを見てください。
  • 帝国の体系 イタリア 1〜2世紀 帝国の街道
    インドの海岸から出るローマ貨幣の話に、大切な留保が付いています。土に残るのは使われた貨幣ではなく、取りに戻れなかった貨幣のほうだという一文です。
  • 南に埋もれた金貨 インド 1〜3世紀 考古と文献
    見つかった場所は、探した場所でもあります。分布の偏りが当時の偏りなのか、今の調査の偏りなのかを、両方考えるための一段です。

評価方法

科目内の演習 11 問(確認 7・比較 0・記述 4)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。