P02 信用で貨幣を作る
手形・預かり証 → 銀行預金・信用創造
その残高は、誰の帳簿の上にあるのか
四段
似ている
顔を知らない相手との取引を、第三者の記録が肩代わりする
違う
預かり証は金貨の裏づけ、銀行預金は貸出が同時に作る。裏づけの種類が違う
使える
「残高」が誰の帳簿の上に存在するかを見る目
限界
帳簿の記録と現代の決済システムを同じ「信用」の語で括るとき。決済の最終性の仕組みは別に読む
「似ている」で終わらせないための四段です。限界は、どこから先は歴史類推をしてはいけないか。
現代のお金の停で読む
教本『現代のお金は、誰の負債なのか』の停のうち、この構造が現れるもの。各停の四段は、教本では画面に出していません。ここで並べて読みます。
財布の一万円と、口座の一万円は同じお金か
1-01 / 現代のお金 現在 東京・ロンドン
- 似ている
- 受け取る側が疑わずに済むものが、お金として回る。銀貨の刻印も、銀行預金の額面も、その役目を果たす。
- 違う
- 銀貨は素材そのものが価値を運んだ。預金は銀行の負債で、その裏づけは銀行の資産・規制・中央銀行の決済にある。
- 使える
- 残高を見たら、誰の負債かを問う癖。財布の紙幣と口座の数字を同じ「お金」の一語で扱わない。
- 限界
- 三パーセントという数字は英国の二〇一九年の値で、国と年で変わる。日本の割合はこの停では言えない。
銀行貸出は、なぜ預金を増やすのか
2-01 / 銀行 2014 年 ロンドン イングランド銀行 季刊誌
- 似ている
- 信用で貨幣を作る仕組みは、金細工師の預かり証や商人の手形と同じ系譜にある。第三者の記録が、取引の疑いを肩代わりする。
- 違う
- 預かり証は金庫の金貨が裏づけだった。銀行預金は貸出が同時に作る。裏づけの種類が違い、制約も規制・資本・準備・金利という制度の側にある。
- 使える
- 「貸出が預金を作る」と「何が貸出を制約するか」を、一組で考える。
- 限界
- この停は英国の説明に基づく。日本の制度(準備預金制度・自己資本規制)の細部は、日本の一次資料で別に確かめる。
何が、銀行の貸出を制約するのか
2-02 / 銀行 2014 年 ロンドン イングランド銀行 季刊誌
- 似ている
- 造幣所も無限には打てなかった。貨幣の量には常に何かの上限がある。
- 違う
- 上限が鉱山の産出量ではなく、資本規制・決済のための中央銀行マネー・借り手の行動・金利という、帳簿の上の条件に変わった。
- 使える
- 「銀行は無からお金を作れる」と聞いたら、三つの束のどれが効いているかを一つずつ当てる。
- 限界
- この説明は英国の 2014 年の論文と 2019 年の解説に基づく。日本の資本規制の水準や準備の運用は、日本の資料で確かめる。
ローンを返すと、お金は消える
2-03 / 銀行 現在 フランクフルト・ロンドン
- 似ている
- 借金の返済で「貸し」の記録が消える点は、粘土板の債務記録を割る行為と同じ。記録の抹消がお金の消滅になる。
- 違う
- 銀貨のような素材のお金は返済で消えない。預金は帳簿の一対なので、返済で消える。
- 使える
- 「お金の量が減った」という報道を見たら、誰が借金を返したか、銀行が何を売ったか、を疑う。
- 限界
- 返済で消えるのは商業銀行のお金。中央銀行の準備や現金は、別の経路で増減する。
中央銀行マネーと、商業銀行マネー
2-04 / 銀行 現在 フランクフルト 欧州中央銀行の解説
- 似ている
- 国家の印のあるお金と、商人の手形という二層は、中世の為替と銀貨の関係に似ている。上の層で下の層を決済する。
- 違う
- 中世の手形は商人の信用だけが裏づけだった。商業銀行マネーは銀行の資産と規制と預金保険に支えられ、中央銀行マネーで決済される。
- 使える
- 「お金」と言われたら、中央銀行マネーか商業銀行マネーか、を分けてから読む。
- 限界
- 三・十八・七十九は英国の 2019 年の割合で、国と年で変わる。ユーロ圏と日本の割合は、この停では言えない。
銀行の貸借対照表を読む
2-08 / 銀行 2014 年 ロンドン 論文の図 1
- 似ている
- 両替商の帳簿も、預かり金を負債、貸付を資産として記帳した。複式簿記の発想は変わらない。
- 違う
- 現代の銀行は貸出の瞬間に負債を作れる。両替商の預かり金は、預けられてはじめて負債になった。
- 使える
- 自分の口座の残高を、銀行の貸借対照表のどの科目か、で言い直す。
- 限界
- 図 1 は英国の説明の模式図で、実際の銀行の科目や比率は各行の決算書で見る必要がある。