P07 新技術が貨幣を変える
打刻→機械→紙 → 電子決済・CBDC・暗号資産
作る技術が変わると、誰が作れるかはどう変わるか
四段
似ている
作る技術が変わると、誰が作れるかが変わる
違う
打刻から機械へは真贋の問題、電子から暗号へは台帳の問題
使える
技術は貨幣の定義を書き換えるが、保証の問いは残る
限界
技術の新しさを価値の裏づけと取り違えるとき
「似ている」で終わらせないための四段です。限界は、どこから先は歴史類推をしてはいけないか。
現代のお金の停で読む
教本『現代のお金は、誰の負債なのか』の停のうち、この構造が現れるもの。各停の四段は、教本では画面に出していません。ここで並べて読みます。
日本銀行当座預金とは、何の口座か
1-08 / 現代のお金 現在 東京 日銀ネット
- 似ている
- 両替商どうしが互いの帳簿で貸し借りを相殺したように、銀行どうしは日本銀行の帳簿で残高を付け替える。
- 違う
- 相殺の相手が同格の商人ではなく、法律で目的を定められた中央銀行で、振替は即時グロスで一件ずつ終わる。
- 使える
- 「銀行にお金がある」と聞いたら、金庫の現金か、日銀当座預金の残高か、を分ける。
- 限界
- 当座預金の利息(補完当座預金制度)は中央銀行のブロックで扱う。残高の業態別の分布は見ていない。
国債は、どこで受け渡されるのか
4-04 / 国債 1980 年〜 東京 国債振替決済制度
- 似ている
- 両替商の帳簿で預かり金を付け替えた振替は、券面を動かさずに権利を移す方法として同じ。
- 違う
- 振替の帳簿が中央銀行にあり、法律の認可で運営され、資金の決済と条件づけられている。
- 使える
- 「国債を買った」と聞いたら、どの口座に、どの参加者を通じて記帳されたかを想像する。券面は無い。
- 限界
- 社債や株式の振替制度の細部、国債登録制度の残りの用途は扱わない。
交通系カードの残高は、誰の負債か
8-01 / デジタル 現在 東京 資金決済に関する法律
- 似ている
- 特定の発行者が出した価値が、限られた範囲で貨幣のように回る形は、藩札や商店の私札と同じ。
- 違う
- 電子的に記録され、法律が定義と保全の枠を与えている。範囲の限定は、法ではなく発行者の契約で決まる。
- 使える
- 残高を見たら、発行者は誰か、どこで使えるか、どこまで保全されているか、の三つを問う。
- 限界
- 供託の基準額(政令)と、供託以外の保全方法(保全契約・信託)の中身は扱わない。会計上の扱いも別に確かめる。
ビットコインは、何を解いたのか
8-02 / デジタル 2008 年 10 月 31 日 インターネット
- 似ている
- 発行者のいない貨幣、という発想は、秤で量った銀が国家の刻印なしに流通した時代の記憶と重なる。
- 違う
- 素材による価値の裏づけはない。proof-of-work が支えるのは取引の順序と改ざんへの耐性で、市場での価値そのものを保証しない。発行者も負債もない。
- 使える
- 「ブロックチェーン」と聞いたら、それが解いたのは何か(順序と二重支払い)、解いていないのは何か(価値と単位)を分ける。
- 限界
- 価格や採掘の現状、電力の議論は扱わない。BIS の評価は 2025 年時点のもの。
中央銀行デジタル通貨 — 現金のデジタル版になるのか
8-07 / デジタル 2020 年〜2026 年 東京・フランクフルト
- 似ている
- 国家が新しい素材で貨幣を出す判断は、銅から紙へ移った歴史と同じ形をしている。
- 違う
- 素材が電子的な記録で、設計に二層構造・オフライン・相互運用性という決済システムの要件が最初から組み込まれる。
- 使える
- CBDC の報道を見たら、一般利用型かホールセール型か、直接型か間接型か、発行の決定があったか、を確かめる。
- 限界
- 各国の進捗は日々変わる。この停は日本銀行の 2020 年方針と 2026 年 6 月の報告、ECB の頁に基づく。