「悪貨は良貨を駆逐する」を考える
違う値打ちのお金を同じ額面で使うと何が起きるのか。法則の条件と来歴を学びます。
本文を読む目安:約8分
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3分でわかる 悪いお金が良いお金を追い出す
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- あなたならどうする?
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1絵で見る
横に送って見られます
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良いお金と悪いお金が、同じ値打ちとして使える場合がある
たとえば銀の多い硬貨と、銀の少ない硬貨
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人は、良いほうを手元にしまい、悪いほうから使う
どちらで払っても同じ扱いだから
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すると、町に回るのは悪いお金ばかりになる
これが「悪貨は良貨を駆逐する」
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紀元前405年
この様子は、昔のアテナイの喜劇にもう出てくる
観客は、本物の悪い硬貨を手にしていた
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1792年〜
アメリカは金と銀の比を法で決めた。安く扱われた金が国外へ出た
15対一
法で決めた金と銀の比
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1560年
悪いお金を集めて作り直すと、追い出しは止まる
同じ値打ちで並ばなければ、起きない
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1858年
「グレシャムの法則」の名は、ずっと後から付いた
グレシャム本人は、この形で書き残していない
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名前を見たら、起きた時・名が付いた時を分けて考える
有名な言葉ほど、条件が落ちて伝わる
2数字で見る
1858年
法則に名前が付いた年。現象は紀元前から見えていた
3あなたならどうする?
あなたの財布に、同じ額として使える硬貨が2枚。片方は銀が多く、片方は銀が少ない。お店でどちらを出しますか?
選んでみてください
銀が少ないほうを出す
多くの人がそうします。どちらで払っても同じ扱いなら、良いほうは手元に残す。その結果、町には悪い硬貨ばかりが回ります。
銀が多いほうを出す
もし銀の多い硬貨が額より高く受け取ってもらえるなら、それも筋が通ります。使っても損をしないので、しまう理由がないからです。
この法則は、同じ額で無理に通わせる決まりがあるときだけ働きます。条件ごと覚えておきましょう。
再現画
この講座で、分かるようになること
- グレシャムの法則と呼ばれるものが、誰の言葉かを根拠つきで言える。
- 同じ観察が繰り返し現れた理由を、貨幣の仕組みから説明できる。
- この法則が働くための条件を挙げられる。
詳しい案内
講座の番号:C07
監修: 葉山 満
本文のほかに、演習9問・コイン2点・読む教材14件・参考文献1件 所要時間の出し方
ほかに分かること
- 働かない場合を一つ挙げて、なぜ働かないかを説明できる。
- グレシャム以前の観察者(オレーム・コペルニクス)と以後の命名者を区別して語れる。
- 「再発見」が起きる構造(忘却・翻訳の壁・現象の再来)を説明できる。
この講座は、ほかの講座を読まなくても始められます。
あわせて読むと、つながりが分かる講座(任意)
出典の確かめ方を詳しく知りたい方へ(任意)
評価方法
講座内の演習9問(確認7・比較0・記述2)。到達は自己評価で記録します。
この講座の8つの章
- 名前は、いちばん後から来た現象は紀元前から見えていた。名前が付いたのは千八百五十八年。順序を取り違えない。
- グレシャムが実際に関わったことグレシャムは法則の発見者ではなく、悪貨が回る現場で働いた実務家だった。
- なぜ、同じことが何度も起きるのか条件は「同じ額面で並ぶ」の一つだけ。だから時代と場所を問わず繰り返す。
- 働かない場合を知ると、法則が分かる条件を落とすと法則は格言になる。格言は確かめられない。条件ごと持ち歩く。
- 最初の観察者たち — オレームとコペルニクス十四世紀の司教も、十六世紀の天文学者も、同じ現象を観察して書き残していた。
- 十二年早かった神学者 — アスピルクエタ貨幣数量説の産声はスペインで上がった。ボダンより十二年早く、そして名は残らなかった。
- 体制の欠陥を再発見した男 — トリフィン基軸通貨の宿命という観察も、名前つきの洞察になった。警告は再発見の最前線にいる。
- 名付けた人 — マクラウドと名前の力学名は観察を運ぶ器になり、同時に中身の検討を止める蓋にもなる。名付けは両刃の発明。
読む教材(14)
- ロンドンと後世の書斎 イギリス グレシャムと改鋳 1560〜1858年
第1節。この講座の背骨です。誰が名づけたかが書かれています - イギリス 総論・世界 後16世紀 グレシャムの法則
第1節。法則が「人間の性」として説明されている例。言い切りの強さに注意して読んでください - 大改悪 イギリス 1544〜1551年 イングランドの町
第2節。悪鋳が帳簿の上では成功に見える場面です - 女王の宮廷 イギリス グレシャムと改鋳 1560年頃
第2節。女王に仕えた助言者としてのグレシャム - ロンドンの造幣所 イギリス グレシャムと改鋳 1560〜1561年
第2節。回収して打ち直すという手当て - ロンドン 王立取引所 イギリス グレシャムと改鋳 1571年
第2節。助言のほかに残したもの - 王は四度、支払いを止めた スペイン 1576年 アントウェルペン
第2節。グレシャムが働いた金融都市の、その後です - 1792年鋳貨法 アメリカ 1794年 造幣局の刻印室
第3節。同じことが新大陸で起きた場面。比が十五対一と定められています - 価格革命 スペイン 1556年 サラマンカ、学派の講堂
第6節。十二年早かった神学者。名の行方の非対称 - 錨の軋み アメリカ 1960年 ワシントン、議会
第7節。観察者自身の名がついた現代の例 - 銀の世紀と物価革命 フランス 1566〜1568年 パリ高等法院の書斎
第6節の対。論争の形が名を運んだ側の記録 - 壊れる貨幣 ギリシャ 前405年 レナイア祭の劇場
名前より二千年以上早い、最初の観察です。前405年のレナイア祭にかかった喜劇『蛙』の合唱隊が、良貨は仕舞われ最悪の刻印の粗悪な銅貨だけが市場を巡ると歌っていること、その一節を原文で確かめてください。 - 傾く秤 オーストリア 1621〜1623年 両替の台
法則が働くときに人が実際にしていた動作が書かれています。秤を傾けて良貨を選り上げる動作がウィッペンであり、その二つの動詞がキッパー・ウィッパーという時代の名になったこと、選り上げられた銀が炉で溶かされ薄めた貨幣に化けて戻る道筋を見てください。 - 一九一四年八月 ロシア 1914年 市中
同じ法則を、人間の性ではなく合理として説明している停です。金貨が消えたのは政府が回収したからではなく人々がしまい込んだからだと、よくある誤解を正した上で書かれています。
参考文献
この講座の本文で参照した本と資料です。