劣化の帝国
C04 — 人物の鎖

ネロが始めた。カラカラが進めた。ディオクレティアヌスが立て直そうとした。
監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 4,079 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 10 問・実物 4 点・読む教材 10 停・参考文献 1 件
この科目で、できるようになること
- ローマの銀貨が劣化していく順序を、人物の名で言える。
- 劣化を止めようとした試みが、なぜ効かなかったかを説明できる。
- コンスタンティヌスの答えが、それまでと何が違ったかを言える。
- 同じ時期の東方(漢)と比べて、何が違ったかを説明できるようになる。
- ネロからディオクレティアヌスまで、劣化の当事者たちを順に語れる。
- 「戻す試み」の三つの型(しるし・価格統制・新貨幣)とその結末を説明できる。
レッスン(8節)
- ネロが始めたことは、ネロで終わらなかった一度下げると次の人はそこから始める。下げる方向にだけ動く階段ができる。
- 止めようとした人がいた。そして効かなかった価格を止めても、上がる理由が残っていれば取引のほうが消える。ただし評価には諸説がある。
- コンスタンティヌスは、別の答えを出した守る対象を絞れば守りきれる。ただし七百年かけて守ったものも、崩れるのは数十年。
- 東では、同じ時期に何が起きていたか条件が正反対でも同じ結果になることがある。共通点でなく差異を問う。数字の精度も確かめる。
- 二倍を名乗った男 — カラカラ額面二デナリウス、中身一・五。放射の冠は、水増しの王冠だった。
- 二パーセントの世 — ガリエヌスの白い貨幣青銅の芯に銀の化粧。壊れたのは誰か一人の富ではなく、通貨への信という富だった。
- しるしで戻そうとした男 — アウレリアヌス品位のしるしを刻んでも、銀そのものは戻らない。刻印だけでは信は戻らない。
- 値段を縛ろうとした男 — ディオクレティアヌス最高価格令は失敗した。価格は法で縛れない——千七百年前の敗北が今も教科書に載る。
読む教材(10)
- ローマ帝政 総論・世界2700年 後 64年 ネロの改悪
第1節。ネロの改悪が始まる場面。「やがて止まらなくなる」に注目してください - ローマ属州ガリアの貨幣 フランス 後1〜3世紀 帝国の造幣工房
第1節の図の出どころ。銀貨と金貨の両方の数値が載っています - ビザンティン 総論・世界2700年 後 11世紀 ノミスマの落日
第3節。七百年守った純度が数十年で崩れる場面です - 東方の貨幣文明 総論・世界2700年 紀元前 118年 漢の五銖銭
第4節。東の五銖銭。西と並べて読むための材料です - ローマ帝政 総論・世界2700年 後 215年 カラカラの水増し
第5節。二倍を名乗る仕掛け。放射の冠の意味 - ローマ属州ガリアの貨幣 フランス 後3世紀後半 シャロンの野とトリーアの造幣所
第7節。「刻印だけでは戻りません」——宣言による回復の限界 - ローマ帝政 総論・世界2700年 後 301年 最高価格令の敗北
第8節。千七百年前の敗北が今も教科書に載る理由 - ソリドゥスと西の終わり イタリア 310年頃 帝国の造幣所
四人目が出した答えが、ここにあります。値段を法で止めようとして失敗した帝国が、今度は貨幣そのものを直しました。一ローマ・ポンドから七十二枚、一枚およそ四・五グラムという設計と、守るものを金貨一つに絞った判断を見てください。 - 二十カラット半の再出発 ギリシャ 1092年 帝都の造幣所
純度が崩れきったあとに何をしたかの記録です。かつての名目二四カラットへ戻すのではなく、二〇・五カラットという低い基準を正面から立て直しました。重さの記憶は残し、信用は鋳直すという選び方を見てください。 - カルロスとフアナ メキシコ 1536年〜 メキシコ市造幣所
品位が落ちていく鎖の反対側に、落とさせないための役目が置かれています。二本の柱の間の一文字Rが初代試金官フランシスコ・デル・リンコンの頭文字であり、定めの品位〇・九三〇六を自分の印で請け合っていたことを見てください。
評価方法
科目内の演習 10 問(確認 7・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。
参考文献
- Online Coins of the Roman Empire (OCRE) — American Numismatic Society / Institute for the Study of the Ancient World, NYU ローマ帝国貨の型録データベース。アウグストゥス(前31年)からゼノン(後491年)まで43,000型以上、約20の欧米データベースを通じて実物10万点以上に接続する
実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。