マネーの根にある神殿
英語の money もフランス語の monnaie も、ローマの丘に立った一つの神殿の名を根に持っています。

ローマの造幣所は、カピトリーノの丘のユノー・モネータ神殿に置かれていました。神殿の傍らで、銀が打たれたのです。
やがてモネータという言葉が、造幣所を指すようになります。そして、貨幣そのものを指すようになりました。
英語の money も、フランス語の monnaie も、この神殿の名の末裔です。
場所の名が、物の名になる
言葉の道筋は単純です。神殿の名。そこに置かれた工房の名。そこで作られる物の名。場所が物を名づけました。
同じ型は、ほかにもあります。バンクの語は、両替商が使った台から来ました。ドルは、ボヘミアのヨアヒムの谷で打たれた大型銀貨ターラーの子孫です。ペソは、そのまま重さを意味する語でした。
貨幣の名は、しばしば場所か、道具か、重さの化石です。
モネータとは何者か
ユノー・モネータのモネータについては、警告する者を意味するという説明が伝えられています。
ただし、この学校の教材は、そこから先を確かめていません。なぜその呼び名が女神に付いたのか、確定した答えを持っていないからです。名の由来の、そのまた由来は、たいてい暗いところにあります。
語源には三つの棚が要る
この学校の言語学の科目は、語源を三つの棚に分けて扱います。
- 確かな棚。文書の連続で辿れるもの。バンコからバンクへ、ターラーからドルへ、ペソは重さ。
- 有力止まりの棚。ドル記号の由来など、有力とされながら諸説があるもの。
- 未検証の棚。サラリーは塩の給料から、という有名な語源譚は、本校の教材には裏づけがありません。
モネータから money への道筋は、一つ目の棚に置けます。モネータそのものの由来は、そこには置けません。同じ一語でも、棚が分かれるのです。
棚の名ごと引用する
語源は一級の史料です。同時に、確かめずに語り継がれる通説の巣でもあります。
だから、棚の名前ごと引用します。「確かめられています」と「そう言われています」を、同じ調子で言わない。それだけで、酒場の蘊蓄は史料の引用に変わります。
世界中の「カネ」という言葉の根に、ローマの一つの神殿があります。この一文は、確かな棚に置けます。


