見えない糸で国を動かす商会
十九世紀、ある商会は戦争の資金を動かし、新興国家の銀行設立にも名を連ねました。損を分け合う仕組みから生まれた商会は、時に王よりも大きな力で国を動かす存在になります。

ワーテルローの戦いの結果をいち早く知って財を成した。十九世紀のロスチャイルド家について、広く知られている話です。しかし、この知らせの出どころは一八四六年にパリで刷られた反ユダヤの小冊子で、家の文書館は、当時の手紙にこの話を裏づけるものが無いことを示しています。
戦争の財布から銀行の株主へ
ロスチャイルド家は、十九世紀に各国の国債を引き受けて戦争の資金を動かした商会の一つでした。一八一四年にはイギリス政府の代理人として、ウェリントン軍のための金貨を買い付けています。
時代は下り、一八四一年にギリシャで王令により国立銀行が設立されたとき、その株主名簿にもパリのロスチャイルド商会の名がありました。この銀行は国営ではなく、株式を募る民間銀行です。国家やバイエルン王と並ぶ出資者でした。設立を主導したのは、スイスの銀行家エイナールと、初代総裁ゲオルギオス・スタヴロスです。
制度が呼び寄せた百四十の商会
商会が都市の繁栄そのものを動かした例もあります。フランスのリヨンの大市は、千四百二十年に王太子だったシャルル七世が自由市の特権を与えたことから始まりました。ルイ十一世はこれを拡充し、千四百六十三年の勅許で第四の大市を加え、年に四回、あわせて六十日の市に育てます。
そのうえで王は、王国の商人に国境の向こうジュネーヴでの商いを禁じました。免税の大市と、競う都市の締め出し。この制度だけで、ジュネーヴの繁栄はリヨンへ移ります。メディチ銀行の支店が千四百六十六年に移転を終え、およそ百四十のフィレンツェ商会が引き寄せられました。
損を分け合う仕組み
商会とは、商いを組織として行う、会社の前身です。一族や仲間で出資し、遠方の商いを分担しました。損を分け合える形ができたことで、一人では背負えない規模の交易が動くようになったのです。
お金を貸す者が、王よりも大きな力を持つ。戦争も、平和も、国債という見えない糸で動かされる時代になりました。国債を引き受けるとは、その国の戦争の可否を握るということです。貸さなければ、戦えません。しかも国債の値段は市場で毎日つくので、国の信用が数字で見えるようになります。
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