美術史としての貨幣
F5 — 隣の学問

市場の値段には一切触れません。 エウアイネトスの横顔、ブラクテアートの小宇宙、キヨッソーネの彫刻。手のひらの美術史です。
監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 6 分(本文 3,152 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 6 問・実物 3 点・読む教材 5 停
この科目で、できるようになること
- 貨幣美術の頂点(シラクサ・ブラクテアート・金貨の時代)を様式の言葉で語れる。
- 様式の伝播(イタリア→フランスのテストン)を美術史の現象として説明できる。
- 彫り手(エウアイネトス・キヨッソーネ)を美術家として位置づけられる。
- 「美は何のためだったか」を、複数の答えの併存として論じられる。
レッスン(6節)
- 古典の頂点 — 水流の髪と正面の顔エウアイネトスの線、キモンの構図。前五世紀のシラクサに、貨幣美術の最初の頂点がある。
- 様式の独創 — 薄さが生んだ小宇宙ブラクテアートは薄さを表現に変えた。他のどこにも似ない様式は、地方から生まれる。
- 様式は旅する — イタリアからのテストンミラノで見た肖像銀貨の様式を、王が母国へ持ち帰った。美術史の伝播が貨幣で起きた。
- 金貨の黄金時代 — 竜を退治する聖ゲオルギオス金本位の時代に、歴史上もっとも美しい金貨たちが生まれた。ソブリンの竜退治はその象徴。
- 彫刻家の紙幣 — キヨッソーネの五百枚五百近い原版を彫った手は、紙幣を美術にした。そして彫り手の記憶が図像に混ざった。
- 美は何のためだったか — 四つの答えの併存権力の誇示、信用の保証、偽造の壁、そして美そのもの。答えは択一ではなく併存する。
読む教材(5)
- シラクサ 総論・世界2700年 紀元前 405年 エウアイネトス
第1節。西洋美術史に残る横顔。線の頂点 - ブラクテアート ドイツ 12〜13世紀 中東部ドイツ、彫金の工房
第2節。ロマネスク美術の小宇宙。時代様式の海の一部としての貨幣 - ヴァロワの金貨 フランス 1514〜1547年 王国の造幣所
第3節。様式の伝播の実例。イタリアからの道 - ソブリン誕生 イギリス 1817年 ロンドン・王立造幣局
第4節。聖ゲオルギオスの竜退治。金貨の黄金時代の象徴 - 円の誕生 日本 1881年 紙幣寮 彫刻室
第5節。五百枚の原版と、ジェノヴァに残る収集
評価方法
科目内の演習 6 問(確認 4・比較 1・記述 1)。到達は自己評価で記録します。