図像の対決
C05 — 人物の鎖

同じ十年に、二つの帝国が正反対の答えを出した。 神の顔を刻んだ皇帝と、文字だけを選んだカリフ。貨幣の上で交わされた、史上最大の神学論争です。
監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 6 分(本文 2,913 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 5 問・実物 2 点・読む教材 5 停
この科目で、できるようになること
- 六九二〜六九六年の「貨幣の神学論争」を、両陣営の論理つきで説明できる。
- 聖像破壊(イコノクラスム)が貨幣デザインに及んだ経路を言える。
- 敵の図像・文字を写す「借用」を、対決の派生として位置づけられる。
- 図像の対決の現代形(顔のない通貨・文字だけの決済)を論じられる。
レッスン(6節)
- 神の顔を刻んだ皇帝 — 六九二年皇帝ではなく神が貨幣に載った。それは信仰の宣言であり、激しい論争の始まりだった。
- 文字で応えたカリフ — 六九六年顔を消し、言葉だけを残す。逆の答えは、逆の信仰の、同じだけ一貫した表現だった。
- 内側の揺り戻し — 聖像破壊の系譜対決は帝国の間だけでなく、それぞれの内側でも続いた。八百年後、嵐は低地を走る。
- 敵の答えを写す — 対決のねじれ対決の最中にも、王たちは敵の様式を写した。憧れは、教義より足が速い。
- 混血の貨幣 — 出会いの物証ギリシャ人の顔をした仏教の王。対決の周縁では、二つの文明が一枚に同居した。
- 対決の現在地 — 顔のない時代にユーロは架空の橋を、決済アプリは文字と数字だけを選んだ。対決は終わらず、静かになった。
読む教材(5)
- ビザンティン 総論・世界2700年 後 692年 神の顔
第1節。神が硬貨に刻まれた瞬間と、それが呼んだ論争 - ビザンティン 総論・世界2700年 後 696年 ダマスカス
第2節。まったく逆の答え。対決のもう一方の当事者 - 前夜 オランダ 1566年8月 フランドル西部、教会
第3節。八百年後の実力行使。問いは決着していない - オファのペニー イギリス 8世紀後半 マーシアからの遠い交易路
第4節。対決のねじれ。敵の様式を写した王の物証 - ヘレニズム 総論・世界2700年 紀元前 155年 メナンドロスのインド
第5節。対決ではなく同居を選んだ周縁の一枚
評価方法
科目内の演習 5 問(確認 4・比較 1・記述 0)。到達は自己評価で記録します。