顔を載せた男
C03 — 人物の鎖

生きたまま、自分の顔を貨幣に載せた男。
監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 3,962 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 10 問・実物 5 点・読む教材 10 停・参考文献 1 件
この科目で、できるようになること
- カエサルの肖像が持った意味を、当時の制度から説明できる。
- EID MAR デナリウスが何を主張していたかを読み解ける。
- 暗殺者が貨幣を打った理由を説明できる。
- 「悪い貨幣ほど残る」という現象を説明できるようになる。
- 「生きた顔」の系譜を、プトレマイオスから現代まで延長して語れる。
- 顔を消した政権(コモンウェルス)の選択を、載せた政権と対で論じられる。
レッスン(8節)
- 生きた顔を載せることの、当時の意味カエサルが越えたのは「生きている人を載せる」という最後の一段。ただし因果は断定できない。
- 暗殺者が、なぜ貨幣を打ったのか貨幣は支払いと同時に主張を運ぶ。給料と一緒に、戦う理由が手渡される。
- 悪い貨幣ほど、残ることがある良い貨幣は溶かされ、悪い貨幣は残る。現存する貨幣は、当時の代表ではない。
- 同じ主張が、千八百年後に繰り返される同じ形は繰り返される。ただし形の一致は原因の一致ではない。そこに問いが立つ。
- 最初に破った男 — プトレマイオス神でも死者でもなく、生身の王の顔。カエサルより二百六十年早い禁忌破りがあった。
- 解禁の実務家 — ルイ十二世とテストンイタリアで見た様式を母国へ。顔の解禁は、しばしば輸入から始まる。
- 顔を消した国 — コモンウェルスの十一年王が消えれば貨幣も変わる。英語の銘と顔のない意匠は、それ自体が革命の宣言だった。
- 顔の現代 — 袁大頭から立体肖像へ顔は支配の宣言から、親しみの器へ、そして偽造対策の要へ。機能は変わり、力は残る。
読む教材(10)
- 一枚の伝記 総論・世界2700年 紀元前 42年 一枚の誕生
第2節。EID MAR デナリウスが生まれた場面です - ローマ共和政 総論・世界2700年 紀元前 31年 アントニウスの軍団貨
第3節。「質が悪かったからこそ残った」という一節を、原文で確かめてください - 機械と革命 総論・世界2700年 後 1804年 パリ
第4節。千八百年後に同じ形が繰り返される場面です - 部族の王の名 イギリス 前55・前54年 ブリテン南東岸の沖
カエサルのブリテン遠征。征服には至らず引き返した記録です - ヘレニズム 総論・世界2700年 紀元前 305年 プトレマイオスのエジプト
第5節。カエサルより二百六十年早い禁忌破り - ヴァロワの金貨 フランス 1514〜1547年 王国の造幣所
第6節。解禁は輸入から。通説の訂正まで含めて - 籠城のカネ イギリス 1649〜1660年 コモンウェルスのロンドン
第7節。顔を消した国の、英語の銘 - 中国 総論・世界2700年 後 1914年 袁大頭
第8節。支配の道具が愛称を持つ——袁大頭 - 政治広告としての貨幣 イタリア 前44年 ローマの造幣所
顔を載せるという行為そのものを、手続きの側から見た記録です。型を作った造幣官マルクス・メッティウスの名が残っていること、そして先祖を刻むのは許され自分を刻むのは許されないという境目がどこにあったかを確かめてください。 - 征服者の銀、都市の銅 ギリシャ 前44年〜 植民市の造幣所
顔が属州へ渡っていく場面です。ギリシャの古都コリントスに、カエサルの月桂冠の肖像とラテン語の銘を持つ貨幣が現れ、素材には銀ではなく青銅が選ばれました。その線引きに属州を治める設計が出ています。
評価方法
科目内の演習 10 問(確認 7・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。
参考文献
- Coinage of the Roman Republic Online (CRRO) — American Numismatic Society / British Museum / Münzkabinett Berlin Michael Crawford『Roman Republican Coinage』(1974) のオンライン版。共和政ローマ貨の同定に用いる基準типология。新出の埋蔵品により年代は改訂されている
実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。