NOMISMA SCHOLA

通貨統合と分裂

B14 — 横断テーマ

通貨統合と分裂 — 科目の口絵

二度の大戦で殺し合った国々が、通貨を一つにしました。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 4,057 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 11 問・実物 3 点・読む教材 11 停・参考文献 1 件

この科目で、できるようになること

  • 通貨を統合するときに各国が手放すものを、具体的に言える。
  • 交換比が政治で決まった例を挙げ、その帰結を説明できる。
  • 固定された為替が嵐に襲われる仕組みを説明できる。
  • 統合の記録を読むとき、経済の計算と政治の決断を区別できるようになる。
  • 低地の貨幣統合(一三三九年協定・フィエルランデル)を「前例の蓄積」として説明できる。
  • 東西ドイツの一対一交換を、光と影の両面から論じられる。

レッスン(8節)

  1. 統合で手放すもの通貨統合で手放すのは為替・金利・発行量。残るのは財政だけ。
  2. 交換比は、政治で決まることがある交換比は政治で決まることがある。経済の計算と政治の決断を混同しない。
  3. 固定した為替は、嵐に狙われる固定為替は「守りきれない」と思われた瞬間に守れなくなる。統合は問題を消さず、移す。
  4. 通貨が消えるとき、何が残るか通貨は制度上の死と、慣習からの消滅がずれる。記録では二つを分けて読む。
  5. 破れた約束、残った前例 — 低地の七百年統一を試みては失敗する。その反復が、のちの大統合の下ごしらえになる。
  6. 一対一の政治 — 東の貯えと西の帳簿交換比は経済計算ではなく政治の宣言だった。奇跡と代価は同じ決断の裏表。
  7. 嵐の水曜日 — 固定の網が破れた日別々の通貨を結ぶだけの仕組みは、嵐のたびに軋む。敗北の日は、解放の日と呼び直されもした。
  8. 消えた通貨の戸籍調べ — 死の定義法貨の終了・交換期限・約束の履行。通貨の「死」には少なくとも三つの日付がある。

読む教材(11)

  • 戦争とお金 総論・世界2700年 後 2002年 戦争を防ぐ通貨
    第2節の前提。戦争を防ぐ通貨という祈りが、いちばん端的に書かれています
  • 再統一 ドイツ 1990年 ブンデスバンクの会議室
    第2節。通貨の番人自身が慎重論を上げた場面です
  • マルクからユーロへ ドイツ 1992年 欧州の為替市場
    第3節。固定為替が嵐に襲われる場面。同じ嵐が島国では別の名で呼ばれます
  • フランの黄昏 フランス 1999〜2002年 フランスの両替所
    第4節。6.55957 という数字の細かさに注目してください
  • 分立の世紀 オランダ 1339年12月 フランドルとブラバント、評議の間
    第5節。「約束は破れました。けれど、前例は残ったのです」
  • 再統一 ドイツ 1990年代 東部ドイツの工業地帯
    第6節。奇跡と代価は同じ決断の裏表。功罪をあわせ呑む書き方の手本
  • 危機の二十年 イギリス 1992年 シティの取引室
    第7節。暗黒の水曜日と白い水曜日。同じ日の二つの名前
  • 分裂・狂乱・奇跡 ドイツ 2002年〜現在 ドイツ連邦銀行の窓口
    第8節。「制度としては終わっても、約束は生きている」
  • グロッソ イタリア 13世紀 北イタリアの都市
    統合の逆の側です。隣の都市が歩いて一日の距離にある半島では、統べる者がいないことが品位を守る力になりました。
  • 選んだ終わり オーストリア 2002年 財布の中
    同じ通貨の終わりでも、一九三八年に外から消されたときと、条約を結び換算率を刻んで自分の手で畳んだときとでは何が違うのか。二つの終わりを並べて読んでください。
  • 一日六十ユーロ ギリシャ 2010〜2018年 ブリュッセル
    共通通貨の中には、自国通貨の切り下げという出口がありません。その代わりに何が行われたかを、国債の額面を五三・五パーセント削った債務再編で確かめてください。

評価方法

科目内の演習 11 問(確認 7・比較 1・記述 3)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

  • Our money — European Central Bank ユーロの導入と現行券種についての中央銀行自身の解説

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。