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二枚のコインは、同じ道具で作られたのか

写真を見比べて、コインを打った道具「極印」を探す

二枚の銀貨の裏を並べると、文字の位置まで揃っています。表は違うのに、裏はなぜここまで同じなのか。その答えになる道具(極印)を手掛かりに、同じ極印で打たれたコインを探し、発行量を考えます。

本文を読む目安:約14分
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資料写真二枚のコインは、同じ道具で作られたのか — 講座の口絵
XII-11 と XII-12 の裏。ニューウェルが同じ一つの裏極印から打たれたとした二枚(表は別々の表極印)。出典: Newell 1927, Plate XII, 11・12(写し: Internet Archive の coinageofdemetri00newe・資金提供 SNS Library と Washington University Libraries・1927年刊でパブリックドメイン)。図版 XII の同じページの写しから、裏だけを拡大縮小せずに同じ大きさで切り出して並べた。回転・補正はしていない。

二枚の銀貨の裏です。岩に右足を載せたポセイドン、三叉の矛、左右に縦に並ぶ王の名の文字。

資料写真
写真A(図版 XII-11)の裏の一部
写真A(図版 XII-11)の裏の一部
写真B(図版 XII-12)の裏の一部
写真B(図版 XII-12)の裏の一部
出典: Newell 1927, Plate XII, 11・12(写し: Internet Archive の coinageofdemetri00newe・1927年刊でパブリックドメイン)。回転・補正・描き足しはしていない。同じ大きさの枠で切り出したことは、硬貨の実寸が同じという意味ではない

矛の先と、右の列の最初の文字です。二枚の同じ部分を、拡大縮小せずに切り出して並べました。最初の文字は、矛のどの高さから始まっているでしょうか。

別々のコインなのに、なぜここまで揃うのか。

答えは、コインを打つ道具にあります。表と裏の極印で銀を挟み、金鎚で打つ。極印の傷や文字の位置は、打たれたコインのすべてに写ります。

一枚が打たれるまで
  1. 極印を彫る
    表と裏で別の極印。鋼に逆さの像を彫る
  2. 表極印を据える
    金床の側に置く
  3. 素材を載せ、打つ
    裏極印を上から合わせ、金鎚で打つ
  4. 一枚に両面が写る
    極印の傷や欠けも、そのまま写る
  5. 極印は摩耗する
    表は裏より遅い。数えるのは表極印

自分でも一組を比べてみます。第1節では、この二枚の裏の文字とモノグラムを一つずつたどります。演習では、五枚の表を「一致」「不一致」「この写真では決められない」で見比べます。

文字の位置が揃う理由を、写真でもう少し確かめてみましょう。

この講座で、分かるようになること

  • 二枚の貨幣を見て、「絵柄が同じ」「型番号が同じ」「極印が同じ」を分けて言える。
  • 研究者が付けた極印の番号(表はローマ数字・裏は数字)を読み、同じ極印を持つコインをつなげる。
  • 写真を見比べて、「一致」「不一致」「この写真では決められない」を、見た箇所とともに言える。
詳しい案内

講座の番号:E2 — 写真を見比べて、コインを打った道具「極印」を探す

監修: 葉山 満

本文のほかに、演習8問・コイン2点・読む教材4件 所要時間の出し方

ほかに分かること

  • 標本の枚数と極印の数から n/d を計算し、発行量を見積もるときの幅と前提を説明できる。

この講座は、ほかの講座を読まなくても始められます。

出典の確かめ方を詳しく知りたい方へ(任意)

評価方法

講座内の演習8問(確認5・比較0・記述3)。到達は自己評価で記録します。

もっと調べたい方へ(発展・本文の第5節から)

本文は第4節で一区切りです。第5節からは、極印を数えて発行量を考える発展です。

  • 表の極印31と裏の極印84(同じ銀貨のまとまり)。表が長持ちし、裏が先に替わる。
  • 標本が足りているかを測る n/d(標本の枚数 ÷ 極印の数)。図版の43枚だけで数えると1.48で、目安の1.5を割る。
  • 表の極印1つで打てた枚数の平均を20,000枚と仮に置くと、見えた表の極印19からの試算は380,000枚。条件を置いた試算で、下限とは限らない。
  • 極印の数と出来は、造幣所の大きさと王に残る時間を語る。ただし、留保ごと引用する。
振り返り:3分でわかる(任意)

3分でわかる 同じ道具(極印)で打たれたコインを探す

  1. 絵で見る
  2. くわしく読む

1絵で見る

横に送って見られます

1 / 5

二枚の銀貨の裏を並べると、文字の位置まで揃う

表は、別々の極印から打たれている

2 / 5

表と裏の極印で銀を挟み、金鎚で打つと1枚ができる

極印は、コインを打つ道具

3 / 5

極印に傷があれば、打たれたコインにも同じ傷が写る

欠けも、文字の位置も、そのまま写る

4 / 5

絵柄や型番号が同じでも、極印が同じとは限らない

答えは「一致」「不一致」「この写真では決められない」の三つ

5 / 5

同じ極印を持つコインをつなぐ。つながりと順序は別の問い

順序は研究者の並び。型番号の大小だけでは決めない

2くわしく読む

本文をくわしく読む ↓

この講座の8つの章
  1. 二枚の銀貨の裏を並べる — なぜ、ここまで同じなのか二枚の表は別の道具で打たれているのに、裏は文字とモノグラムの位置まで揃う。その理由は、打った道具にある。
  2. 極印とは何か — 打つ道具と、打たれた貨幣極印の傷は貨幣に写る。数えるのは、摩耗の遅い表極印。
  3. 同じ極印を見分ける — 「似ている」と「同じ」絵柄・型番号・極印は別のもの。極印の判定は「一致」「不一致」「この写真では決められない」の三つ。
  4. 極印の連鎖 — 個体をつないで、打つ順序を復元する共有された極印は個体を繋ぐ。どちらが先かは別の問いで、研究者の並び(様式・彫り直し・すり減り)とともに読む。
  5. 何個の極印が使われたか — 観察された数と、原初の数数えた極印は観察の数。一枚だけの極印があるなら、まだ見つかっていない極印もある。
  6. 発行量を見積もる — 極印の数から、枚数へ表極印ごとの20,000枚は仮に置いた平均。幅は10,000〜40,000。掛けた結果は条件を置いた試算で、下限とは限らない。
  7. 何が言えて、何が言えないか — 極印研究の限界標本の作り方・極印の彫り直し・信頼区間・流通量。四つの境目を越えて語らない。
  8. 一枚から見える国家 — 極印の数が語る、造幣の規模と時間極印の数は造幣所の規模と時間を語る。ただし留保ごと引用する。
読む教材(4)
  • 肖像の銀 イタリア 16世紀 ローマのゼッカ
    一つの極印から何千枚も打たれ、摩耗するまで使われる。第2節と第6節の前提が、彫る側から書かれています
  • 植民市の銀 イタリア 前6世紀 シュバリスとメタポントゥム
    表の極印と裏の極印は別の道具で、寸分たがわず合わせて打つ。第2節の「表と裏に、一つずつ」を、打ち方の側から
  • シラクサの美 イタリア 前5〜前4世紀 彫金師の工房
    極印を彫った職人が名を刻んだ例。極印が「彫られた道具」であることを、名前つきで確かめられます
  • 貨幣の顔 総論・世界 通史 誰の顔が載るか
    新しい極印を彫って、次の打刻から替える。図像が替わっても量目と品位を確かめる——第8節の、記録を確かめる読み方との接続

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土から出たコインが語ること →

次に分かること:ホードから読み取れることと、読み取れないことを分けられる。

本文を読む目安:約8分 / 読める範囲:講座の入口と目次は無料・本文は購入された方向け

料金のご案内

講座の本文と図解の本、国ごとの物語をすべて読めて、貨幣学検定も受けられます。

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