NOMISMA SCHOLA

保存科学

E8 — 磨いてはいけない

保存科学 — 科目の口絵

磨いてはいけない。 たった一つの禁止から始まる科目です。なぜ磨いてはいけないのか——その理由の中に、保存という学問の全体が入っています。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 6 分(本文 3,103 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 6 問・実物 2 点・読む教材 4 停

この科目で、できるようになること

  • 「表面は情報である」を、摩耗・古色・付着の三つで説明できる。
  • E4 第3節と接続し、摩耗を流通の記録として読める。
  • 磨き・洗浄が消す情報を具体的に挙げ、処置の原則(最小・記録)を言える。
  • デジタル標本の意義と限界を説明できる。

レッスン(6節)

  1. 表面は情報である — 記録媒体としての一枚金属の価値は溶かしても残る。表面の情報は、消えたら二度と戻らない。
  2. 摩耗を読む — すり減り方は記録である均等な摩耗は長い流通、偏った摩耗は使われ方の癖。すり減り方が語る。
  3. 環境という敵 — 眠りの質土は千年守り、手入れの誤りは一日で損なう。環境の管理が保存の本体。
  4. 善意の破壊 — 磨き・洗浄・修復の罪磨きは金属を磨き、情報を消す。この分野最大の破壊者は、悪意ではなく善意だった。
  5. 処置の原則 — 最小と記録と可逆処置は最小に、記録は最大に、できれば可逆に。三原則は失敗の歴史から蒸留された。
  6. デジタル標本 — 新しい保存のかたち撮影は情報を消さない保存。本校の実物頁は、触れない標本室として設計されている。

読む教材(4)

  • 一枚の伝記 総論・世界2700年 近代 発見と来歴
    第1・4節。「磨かれ」の一語が、この科目の出発点
  • エピローグ 総論・世界2700年 旅の終わり 二千七百年の約束
    第2節。すり減った一枚に刻まれた、約束の旅の記憶
  • 貨幣が消えた島 イギリス 5世紀 廃れゆく属州の町
    第2節。摩耗が貨幣圏の寿命を記録した実例
  • 一枚の伝記 総論・世界2700年 千年 土の中の眠り
    第3節。土という保管庫。眠りの質

評価方法

科目内の演習 6 問(確認 4・比較 0・記述 2)。到達は自己評価で記録します。