NOMISMA SCHOLA

同じ法則の再発見

C07 — 人物の鎖

同じ法則の再発見 — 科目の口絵

「悪貨は良貨を駆逐する」と書いたのは、グレシャムではありません。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 3,886 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 9 問・実物 2 点・読む教材 14 停・参考文献 1 件

この科目で、できるようになること

  • グレシャムの法則と呼ばれるものが、誰の言葉かを根拠つきで言える。
  • 同じ観察が繰り返し現れた理由を、貨幣の仕組みから説明できる。
  • この法則が働くための条件を挙げられる。
  • 働かない場合を一つ挙げて、なぜ働かないかを説明できる。
  • グレシャム以前の観察者(オレーム・コペルニクス)と以後の命名者を区別して語れる。
  • 「再発見」が起きる構造(忘却・翻訳の壁・現象の再来)を説明できる。

レッスン(8節)

  1. 名前は、いちばん後から来た現象は紀元前から見えていた。名前が付いたのは千八百五十八年。順序を取り違えない。
  2. グレシャムが実際に関わったことグレシャムは法則の発見者ではなく、悪貨が回る現場で働いた実務家だった。
  3. なぜ、同じことが何度も起きるのか条件は「同じ額面で並ぶ」の一つだけ。だから時代と場所を問わず繰り返す。
  4. 働かない場合を知ると、法則が分かる条件を落とすと法則は格言になる。格言は確かめられない。条件ごと持ち歩く。
  5. 最初の観察者たち — オレームとコペルニクス十四世紀の司教も、十六世紀の天文学者も、同じ現象を観察して書き残していた。
  6. 十二年早かった神学者 — アスピルクエタ貨幣数量説の産声はスペインで上がった。ボダンより十二年早く、そして名は残らなかった。
  7. 体制の欠陥を再発見した男 — トリフィン基軸通貨の宿命という観察も、名前つきの洞察になった。警告は再発見の最前線にいる。
  8. 名付けた人 — マクラウドと名前の力学名は観察を運ぶ器になり、同時に中身の検討を止める蓋にもなる。名付けは両刃の発明。

読む教材(14)

  • グレシャムと改鋳 イギリス 1560〜1858年 ロンドンと後世の書斎
    第1節。この科目の背骨です。誰が名づけたかが書かれています
  • イギリス 総論・世界2700年 後 16世紀 グレシャムの法則
    第1節。法則が「人間の性」として説明されている例。言い切りの強さに注意して読んでください
  • 大改悪 イギリス 1544〜1551年 イングランドの町
    第2節。悪鋳が帳簿の上では成功に見える場面です
  • グレシャムと改鋳 イギリス 1560年頃 女王の宮廷
    第2節。女王に仕えた助言者としてのグレシャム
  • グレシャムと改鋳 イギリス 1560〜1561年 ロンドンの造幣所
    第2節。回収して打ち直すという手当て
  • グレシャムと改鋳 イギリス 1571年 ロンドン 王立取引所
    第2節。助言のほかに残したもの
  • 王は四度、支払いを止めた スペイン 1576年 アントウェルペン
    第2節。グレシャムが働いた金融都市の、その後です
  • 1792年鋳貨法 アメリカ 1794年 造幣局の刻印室
    第3節。同じことが新大陸で起きた場面。比が十五対一と定められています
  • 価格革命 スペイン 1556年 サラマンカ、学派の講堂
    第6節。十二年早かった神学者。名の行方の非対称
  • 錨の軋み アメリカ 1960年 ワシントン、議会
    第7節。観察者自身の名がついた現代の例
  • 銀の世紀と物価革命 フランス 1566〜1568年 パリ高等法院の書斎
    第6節の対。論争の形が名を運んだ側の記録
  • 壊れる貨幣 ギリシャ 前405年 レナイア祭の劇場
    名前より二千年以上早い、最初の観察です。前四〇五年のレナイア祭にかかった喜劇『蛙』の合唱隊が、良貨は仕舞われ最悪の刻印の粗悪な銅貨だけが市場を巡ると歌っていること、その一節を原文で確かめてください。
  • 傾く秤 オーストリア 1621〜1623年 両替の台
    法則が働くときに人が実際にしていた動作が書かれています。秤を傾けて良貨を選り上げる動作がウィッペンであり、その二つの動詞がキッパー・ウィッパーという時代の名になったこと、選り上げられた銀が炉で溶かされ薄めた貨幣に化けて戻る道筋を見てください。
  • 一九一四年八月 ロシア 1914年 市中
    同じ法則を、人間の性ではなく合理として説明している停です。金貨が消えたのは政府が回収したからではなく人々がしまい込んだからだと、よくある誤解を正した上で書かれています。

評価方法

科目内の演習 9 問(確認 7・比較 0・記述 2)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

  • Monetae cudendae ratio(貨幣鋳造論) — IntraText Digital Library(ラテン語原文・語彙索引つき) コペルニクスの貨幣論。ラテン語の全文(約3,008語)と語の索引。グレシャムより前に悪貨と良貨の関係を述べた一次資料

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。