支配者の顔は、なぜコインに載ったか
王、皇帝、共和政の指導者の肖像から、貨幣と権力の関係を読みます。
本文を読む目安:約8分確認問題は任意です(この時間に含みません) 読める範囲:講座の入口と目次は無料・本文は購入された方向け購入後は、使えるようになった時点から本文を読めます
3分でわかる コインの顔と権力
絵で見る 数字で見る あなたならどうする? くわしく読む
1 絵で見る
横に送って見られます
1 / 8
コインの顔は、神 → 死んだ王 → 生きている人の順に進んだ
生きた人の顔は、いちばん最後の一段
2 / 8
紀元前305年〜
エジプトの王プトレマイオスは、生きた自分の横顔を刻ませた
その前に、ペルシアの総督たちにも先例がある
3 / 8
王を追い出したローマで、カエサルが生きた顔を載せた
顔を載せたから殺された、とまでは言えない
4 / 8
暗殺した側は、兵の給料の銀貨に「短剣2本と日付」を刻んだ
給料と一緒に、戦う理由を手渡した
5 / 8
質の悪い銀貨ほど溶かされず、200年以上も残った
残ったコインは、当時の代表ではない
6 / 8
1514年
フランスの王は、イタリアで見た顔入り銀貨を国へ持ち帰った
顔は「輸入」されることもある
7 / 8
1649年〜
王を処刑したイギリスは、コインから王の顔を消した
代わりに英語の言葉を刻んだ
8 / 8
2024年
今のお札の顔は、にせ札を防ぐため。顔の狂いは目立つから
力の印 → 親しみ → 偽造対策へ
← 前へ 次へ →
2 数字で見る
200年以上
質の悪い軍の銀貨が、溶かされずに残った長さ
3 あなたならどうする?
博物館に、昔の質の悪い銀貨がたくさん並んでいます。「当時はこういう銀貨が多かったんだ」と考えてよいでしょうか?
選んでみてください
そう考えてよい ここが落とし穴です。良い銀貨は溶かして作り直す値打ちがあるので消えやすく、悪い銀貨は割に合わないので残りやすいのです。
残り方にかたよりがあるかも その通り。質が悪い銀貨は溶かす値打ちがなく、200年以上も残りました。残ったものは、残るだけの理由があったものです。
残っている数から当時を読むときは、このかたよりを必ず断ってから話します。
再現画
この講座で、分かるようになること カエサルの肖像が持った意味を、当時の制度から説明できる。 EID MAR デナリウスが何を主張していたかを読み解ける。 暗殺者が貨幣を打った理由を説明できる。
詳しい案内 講座の番号:C03
監修: 葉山 満
本文のほかに、演習10問・コイン5点・読む教材10件・参考文献1件 所要時間の出し方
ほかに分かること 「悪い貨幣ほど残る」という現象を説明できるようになる。 「生きた顔」の系譜を、プトレマイオスから現代まで延長して語れる。 顔を消した政権(コモンウェルス)の選択を、載せた政権と対で論じられる。
この講座は、ほかの講座を読まなくても始められます。
あわせて読むと、つながりが分かる講座(任意) コインの絵と文字を読み解く 分かること:一枚の表裏を見て、どの部位に何があるかを指せるようになる。 本文の第1・8節で、この講座に触れています。
出典の確かめ方を詳しく知りたい方へ(任意)
評価方法 講座内の演習10問(確認7・比較0・記述3)。到達は自己評価で記録します。
この講座の8つの章 生きた顔を載せることの、当時の意味ローマの貨幣で、カエサルが越えたのは「生きている人を載せる」最後の一段。先例はあり、因果は断定できない。 暗殺者が、なぜ貨幣を打ったのか貨幣は支払いと同時に主張を運ぶ。給料と一緒に、戦う理由が手渡される。 悪い貨幣ほど、残ることがある良い貨幣は溶かされ、悪い貨幣は残る。現存する貨幣は、当時の代表ではない。 同じ主張が、千八百年後に繰り返される同じ形は繰り返される。ただし形の一致は原因の一致ではない。そこに問いが立つ。 カエサルより前の生きた顔 — プトレマイオス神でも死者でもなく、生身の王の顔。カエサルより前に、エジプトの王にもペルシアの総督にも先例があった。 顔を持ち帰った王 — ルイ十二世とテストンイタリアで見た様式を母国へ。フランスで王の現実の顔が戻ったのは、輸入からだった。 顔を消した国 — コモンウェルスの十一年王が消えれば貨幣も変わる。英語の銘と顔のない意匠は、それ自体が革命の宣言だった。 顔の現代 — 袁大頭から立体肖像へ顔は支配の宣言から、親しみの器へ、そして偽造対策の要へ。機能は変わり、力は残る。
読む教材(10) 一枚の伝記 総論・世界 紀元前42年 一枚の誕生 第2節。EID MAR デナリウスが生まれた場面です ローマ共和政 総論・世界 紀元前32–31年 アントニウスの軍団貨 第3節。「質が悪かったからこそ残った」という一節を、原文で確かめてください 機械と革命 総論・世界 後1804年 パリ 第4節。千八百年後に同じ形が繰り返される場面です 部族の王の名 イギリス 前55・前54年 ブリテン南東岸の沖 カエサルのブリテン遠征。征服には至らず引き返した記録です ヘレニズム 総論・世界 紀元前305年 プトレマイオスのエジプト 第5節。カエサルより二百六十年早い禁忌破り ヴァロワの金貨 フランス 1514〜1547年 王国の造幣所 第6節。解禁は輸入から。通説の訂正まで含めて 籠城のカネ イギリス 1649〜1660年 コモンウェルスのロンドン 第7節。顔を消した国の、英語の銘 中国 総論・世界 後1914年 袁大頭 第8節。支配の道具が愛称を持つ——袁大頭 政治広告としての貨幣 イタリア 前44年 ローマの造幣所 顔を載せるという行為そのものを、手続きの側から見た記録です。型を作った造幣官マルクス・メッティウスの名が残っていること、そして先祖を刻むのは許され自分を刻むのは許されないという境目がどこにあったかを確かめてください。 征服者の銀、都市の銅 ギリシャ 前44年〜 植民市の造幣所 顔が属州へ渡っていく場面です。ギリシャの古都コリントスに、カエサルの月桂冠の肖像とラテン語の銘を持つ貨幣が現れ、素材には銀ではなく青銅が選ばれました。その線引きに属州を治める設計が出ています。
参考文献 Coinage of the Roman Republic Online (CRRO) — American Numismatic Society / British Museum / Münzkabinett Berlin Michael Crawford『Roman Republican Coinage』(1974) のオンライン版。共和政ローマ貨の同定に用いる基準типология。新出の埋蔵品により年代は改訂されている
この講座の本文で参照した本と資料です。