研究作法
E9 — 書いて、初めて学問になる

面白い発見をしても、書かなければ誰にも届きません。
監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: 科目本文 約 8 分 + 教本 約 70 分 = 約 78 分 / 本文のほかに、演習 11 問・実物 1 点・読む教材 10 停・参考文献 1 件
この科目で、できるようになること
- 先行研究を探す入口を、目的に応じて選べる。
- 「まだ誰も言っていない」を確かめる手順を実行できる。
- 引用と要約と剽窃の境目を、自分の文章で判断できる。
- 探した範囲を書き残すことの意味を説明できるようになる。
- 対立する説明を、どちらが強いかではなく、何を確かめれば決着するかで比べられる。
- 「何を載せなかったか」を明示する作法を、自分の文章に適用できる。
教本 — TEXTBOOK
レッスン(8節)
- 入口は、目的で選ぶ入口は目的で選ぶ。型/実物/出土/議論。動く数字は書かない。
- 「まだ誰も言っていない」を確かめる網羅は不可能。だから探した範囲を書く。範囲を書くのは謙遜ではなく防御。
- 引用・要約・剽窃の境目軸は二つだけ。元の言葉のままか/出所を示したか。言い換えても出所が無ければ剽窃。
- 名付けと、確かめられないこと名前が付くと議論しやすくなり、同時に中身が問われなくなる。名付けたら定義も置く。
- 論争の解剖 — 物価をめぐる三百年強い論争は「何を確かめれば決着するか」を残す。勝ち負けより、残された確かめ方を読む。
- 公開の作法 — 見せた黒字の、見せない空欄公開は革命的な作法。だが「何を載せなかったか」を書かない公開は、幻を刷る機械になる。
- 名前の考古学 — グレシャムとチューリップ法則の名も、バブルの物語も、後から鋳直されている。名前と中身の年代を分けて調べる。
- 反対の作法 — 強い相手の形で書く良い反対意見は、相手の最良の形を書き、自分の基準を明示し、検証できる予測を残す。
ケーススタディ — 教材で使う(10)
- グレシャムと改鋳 イギリス 1560〜1858年 ロンドンと後世の書斎
第4節。名前と法則が一致しない話。「歴史の綾」の続きを原文で - 「1873年の犯罪」 アメリカ 1870年代 アメリカ、西部と南部
第4節。名付けが政治になる場面。主張と反論の両方が書かれています - ニュートンの大改鋳 イギリス 1696年 ロンドン塔の造幣所
大改鋳。論争の記録がどう残ったかを見る材料です - 基軸の交代 イギリス 1944年 ブレトンウッズの会議場
ブレトンウッズ。自国に不利な構想を出した代表の記録です - 銀の世紀と物価革命 フランス 1566〜1568年 パリ高等法院の書斎
第5節。貨幣数量説の芽と、「ボダンが最初ではない」という留保まで含めて読んでください - ルイ16世と改革者たち フランス 1781年 パリの印刷所と書店
第6節。載っていない欄が最も雄弁——公開の作法の反面教師 - 錨の軋み アメリカ 1960年 ワシントン、議会
第8節。体制の設計図に書き込まれた欠陥を、議会で言葉にした警告 - 破産しました ギリシャ 1893年12月 議場の演壇
「残念ながら、我々は破産しました」という有名な一言は、議事録にも同時代の新聞にも見つかりません。拠り所が回想録ただ一冊だと分かるまでの、確かめ方の道筋です。 - 紙でない紙幣 中国 2014年〜 研究の始まった部屋
現在進行形の話を、どこで止めて書くか。研究の開始が二千十四年、試験の開始が二千十九年から二千二十年にかけて——確かめられる年だけを書くと決めた一段です。 - 戳記 メキシコ 17〜19世紀 世界の銀の流れ
三分の一前後とする研究と、四割を超えるとみる研究者。数字に大きな幅が残ったままでも、銀の流れの向きは言い切れるという書き方の実例です。
評価方法
科目内の演習 11 問(確認 7・比較 0・記述 4)。到達は自己評価で記録します。
参考文献
- ANS Digital Library — American Numismatic Society 貨幣学の学位論文・オークション目録・電子書籍のオープンアクセス書庫。150年の刊行物を無料で読める
実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。