NOMISMA SCHOLA

女王たち

C13 — 人物の鎖

女王たち — 科目の口絵

理想化されない、現実の政治家の顔。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 4,075 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 10 問・実物 2 点・読む教材 9 停

この科目で、できるようになること

  • 女性君主の肖像が、男性君主と違う扱いを受けた点を説明できる。
  • 「死後も打たれ続ける貨幣」がなぜ生まれるかを説明できる。
  • 肖像が理想化されているかどうかを、判断する手がかりを言える。
  • この鎖の材料が薄いことの意味を、自分で説明できるようになる。
  • クレオパトラの肖像を「理想化の拒否」として読める。
  • 実在の女性と擬人像を区別し、それぞれの系譜を語れる。

レッスン(8節)

  1. 当人が選んだ像と、後世が作った像貨幣の肖像は当人が発注した証拠。ただし「実際の顔」ではなく「見せたかった顔」。
  2. 死後も打たれ続けた貨幣信用が人から型へ移ると、貨幣は死者の顔と過ぎた年号のまま通用しつづける。
  3. 戻した女王 — エリザベス一世「戻す」判断をした君主がいる。ただし本校の材料では、判断の理由までは追えない。
  4. この鎖が薄いことを、どう扱うか材料の薄さは、対象の性質ではなく書き手の関心を映すことがある。薄さ自体を問いにする。
  5. 理想化を拒んだ横顔 — クレオパトラ伝説の美女とは違う、鋭い鼻と強い顎。政治家として刻まれることを、彼女自身が選んだ。
  6. 村々まで届いた顔 — 女帝と女王マリア・テレジアの顔は時間を超え、ヴィクトリアの顔は空間を超えた。届く力の二つの型。
  7. 最初の紙幣肖像 — 神功皇后という選択日本初の紙幣の顔は、伝承の中の女性だった。実在の議論ごと、選択の意味を読む。
  8. 女神たちの系譜 — 擬人像という別の鎖アテナからブリタンニア、ヒスパニアへ。実在しない女性たちが、国家の顔を務めてきた。

読む教材(9)

  • ヘレニズム 総論・世界2700年 紀元前 30年 クレオパトラ
    第1節。理想化されない肖像の記述です
  • マリア・テレジア・ターラー ドイツ 1741年〜 ハプスブルクの帝都ウィーン
    第2節。マリア・テレジア・ターラーが打たれはじめる場面です
  • オーストリア 総論・世界2700年 後 20世紀–現在 今も打たれる
    第2節。帝国が滅びても打たれ続ける銀貨の話です
  • グレシャムと改鋳 イギリス 1560〜1561年 ロンドンの造幣所
    第3節。戻す改鋳の場面。同じ時代のグレシャムにも注目してください
  • 円の誕生 日本 1881年 紙幣寮 彫刻室
    第7節。伝承の人物の顔を、彫り手の記憶が決めた記録
  • 1868年10月19日 スペイン 1869〜1870年 マドリード、造幣所
    第8節。王の顔に代わる国土の擬人像と、国民主権の言葉
  • 紙を刷る権利を、国が独占する インド 1861年 最初の券
    銀貨ではなく、紙に置かれた女王の顔です。裏づけのない紙では顔だけが値打ちの根拠になること、そして肖像が「インド女帝」の称号より十五年早く流通していたことを見てください。
  • 紅海の基軸 オーストリア 19〜20世紀 エチオピア高原
    女帝の没後も、その銀貨は異国の高原で標準であり続けました。貨幣の寿命が、発行者の寿命とは別に流れるという一点を確かめてください。
  • ロンドンの勅許 トルコ 1856年 ロンドンの事務所
    同じ女王が、今度は顔ではなく勅許として現れます。オスマンの名を掲げた銀行の設立を認めたのが英国の女王だったこと——それだけで当時の力の向きが読めます。

評価方法

科目内の演習 10 問(確認 7・比較 1・記述 2)。到達は自己評価で記録します。