NOMISMA SCHOLA

インフレの解剖

B15 — 横断テーマ

インフレの解剖 — 科目の口絵

紙が増えると、なぜ一枚の値打ちが軽くなるのか。

監修: 葉山 満 / 本文の読了目安: およそ 8 分(本文 4,238 字・毎分500字で換算。演習と読む教材の時間は含みません) / 本文のほかに、演習 10 問・読む教材 11 停・参考文献 2 件

この科目で、できるようになること

  • インフレの原因として挙がる二つの説明を、区別して述べられる。
  • 止まったインフレの事例から、何が効いたのかを取り出せる。
  • 「物が足りない」と「貨幣が信じられない」を、店頭の景色から区別できる。
  • インフレの記録に出てくる数字を、どこまで信じるか決められる。
  • 価格革命を「百年で四倍=年一・四パーセント」という実測値で説明できる。
  • 抑圧インフレ(統制下の見えないインフレ)と、その清算の型を説明できる。

レッスン(8節)

  1. 五百年前に、すでに議論があった「中身が減った」と「量が増えた」は別の説明。どちらで語られているかを見分ける。
  2. 印刷機が武器になった瞬間インフレは無策で起きるとは限らない。目的があって刷るほど、止めるのは難しい。
  3. 棚が空だったのは、物不足ではなかった棚が空でも、物不足と信用不足は別。信用不足なら翌朝に戻る。
  4. 止め方には、いくつかの型がある止め方は三つ(切り替え/金利/発行の分離)。どれも効くが、どれも再発を防ぎきらない。
  5. ゆっくり来た革命 — 百年で四倍価格革命は年一・四パーセント。暮らしでは気づけない速さが、一生より長い尺度で世界を変えた。
  6. 一日に二度の値札 — 貨幣が壊れる音月給が意味を失い、賃金は日払いに。貯めるという言葉が消えた世界の暮らしの記録。
  7. 凍らせ、堰き止める — 見えないインフレ統制で値札を凍らせてもインフレは消えず、堰の内側に溜まる。清算は封鎖と新券で来る。
  8. ボルカーの冬 — 治療の実演と、その条件金の裏づけなしに紙の価値は守れるか。答えは「守れる。ただし痛みと独立が要る」。

読む教材(11)

  • 銀の世紀と物価革命 フランス 1566〜1568年 パリ高等法院の書斎
    第1節。五百年前の論争。見かけか実質かという論点を原文で
  • ルール占領 ドイツ 1923年 ベルリン、紙幣印刷所
    第2節。なぜ刷らなければならなかったのかが、最も明快に書かれています
  • 一九四八年六月二〇日 ドイツ 1948年6月 西側占領地区の商店街
    第3節。棚が空だった理由。物不足ではないと説明されています
  • 大インフレとボルカーの冬 アメリカ 1979年〜 ワシントン、連邦準備制度理事会
    止め方②の実例。金利で止めるとき、何が起きるかが書かれています
  • 価格革命 スペイン 1501〜1600年 カスティーリャの町
    第5節。「革命」の名とは裏腹の年一・四パーセント。実測の凄み
  • 一九二三年秋 ドイツ 1923年秋 工場の門前、給料日
    第6節。貨幣が壊れていく音。暮らしの高さからの記録
  • 見えない借金 ドイツ 1933〜1945年 統制の街、凍った値札
    第7節。同じ堤をもう一度築いた国の記録
  • 大インフレとボルカーの冬 アメリカ 1980年代 中央銀行という制度
    第8節。「守れる。ただし、条件がある」——実験の答えの全文
  • 金貨だけが物差し ギリシャ 1943〜1944年 闇の両替市
    物価が壊れた国で連続して残った記録は、公式の統計ではなく金貨ソブリンのドラクマ建て相場だけでした。何で測るのかという問いを、闇の両替市の建値から考えてください。
  • 六倍の物価 韓国 1866〜1867年 俸給の列
    百文の顔をした銭が、使うときには五、六文分でしか通らない。その差額を誰が払ったのかを名指しする、議会も告知も経ない税の実例です。
  • 小銭が消えた イタリア 1970年代 労使の交渉卓
    物価に合わせて賃金が自動で上がる仕組みは、格差を縮める装置であると同時に、インフレを固定化する方向に働いたとされます。一つの設計が持つ二つの顔を見てください。

評価方法

科目内の演習 10 問(確認 7・比較 0・記述 3)。到達は自己評価で記録します。

参考文献

実在を確認した文献・一次資料のみを載せています。