辞典と参考文献
Deciphering the Liquidity and Credit Crunch 2007–2008
Markus K. Brunnermeier — Journal of Economic Perspectives 23(1)

この資料が支える主張
- 住宅ローンの損失は絶対額では数千億ドルと大きいが、2007年10月の株式時価の頂点から2008年10月までに失われた米国株式の8兆ドルに比べれば小さい。本論文はこの損失がなぜ増幅されたかを説明する
- 前提: 低金利環境(アジアからの資本流入と Fed の金利政策)と、貸したまま持つ銀行から「組成して分配する」銀行への転換。証券化(プーリングとトランチング)、CDS(2007年の名目元本は45〜62兆ドルと推計される幅がある)
- 満期の短期化: SIV や導管体は平均90日の ABCP と1年強の中期債で資金を集め、スポンサー銀行の流動性バックストップに依存。投資銀行の総資産に占める翌日物レポの比率は2000年から2007年でおよそ2倍
- 出来事の記録: 2007年2月にサブプライムの延滞増加、5月4日 UBS のディロン・リード閉鎖、6月中旬 Bear の2ファンドへの32億ドル注入、7月 ABCP 市場の枯渇と IKB 救済(35億ユーロ)、7月31日 American Home Mortgage、8月9日 BNP Paribas の3ファンド凍結と ECB 950億ユーロ・Fed 240億ドルの供給、ABCP 金利5.39% → 6.14%(8月8〜10日)
- 2007年8月17日 公定歩合5.75%、9月18日 FF 4.75%、12月11日25bp 下げ、12月12日 TAF 新設。2008年1月19日 Ambac 格下げ、1月22日 緊急の75bp 下げで3.5%、1月30日 さらに50bp
- Bear Stearns: 3月11日 TSLF 2,000億ドル発表、3月11〜12日 Goldman の契約承継の遅れの誤解が漏れ、翌日レポ市場で資金を得られなくなる。週末に JPMorgan が1株2ドル(後に10ドル)で買収、NY 連銀が300億ドルの融資、公定歩合3.5 → 3.25%、PDCF で投資銀行に初めて割引窓口を開く
- 2008年7月11日 IndyMac 破綻、9月7日 Fannie Mae・Freddie Mac 管理下(CDS の信用事由)。9月12〜14日の週末に買い手が政府保証を求め、財務省と Fed は保証を出さず、Lehman は月曜早朝に破産申請。Merrill は日曜に Bank of America へ500億ドルで身売り。9月16日 AIG に850億ドルと80% の持分(10月に370億、11月に400億を追加)
- Lehman 破綻の波及: MMF の損失(額面割れ)と財務省の MMF 保証、CDS 価格の急騰、金融 CP の急減と CPFF の新設。9月19日に財務長官が7,000億ドル案を提案。Fed の貸借対照表は2007年11月の約1.2兆ドルから2008年12月の約2.3兆ドルへ、12月16日に目標金利0〜0.25%
- 増幅機構 (1) 借り手の貸借対照表: 損失スパイラル(レバレッジ10倍で資産5% の下落が保有の半減を強いる例)とマージン/ヘアカットのスパイラル。値下がり後にマージンが上がる理由はボラティリティの上昇・逆選択・過去のデータで測ったボラティリティ
- (2) 貸出経路: モニタリングのモラルハザードと予備的な資金の貯め込み(2007〜08年の銀行間市場は教科書的な例)。(3) 取り付け: ABCP の借換え拒否、Bear(ヘッジファンドの資金引揚げ)、AIG(CDS の担保請求による「マージン・ラン」)。(4) ネットワーク効果: 相殺できる持ち高が取引相手リスクで相殺されず、Lehman 破綻後の9月15〜19日に投資銀行同士が互いの CDS を買った
- 結論: 全国的な住宅価格の下落による延滞増加が引き金。今回の危機は「古典的な銀行危機」に近く、新しいのは証券化の広がりが作った不透明な相互債務の網。火災売却の外部性とネットワーク効果は、各機関がレバレッジと満期のずれを取りすぎ、結びつきすぎる誘因を生む
- 「2007年初めに多くの観察者が流動性バブル/信用バブルの危険を懸念していたが、逆張りを嫌った」。Citigroup の CEO の2007年7月10日の発言(音楽が鳴っている限り踊る)を引く
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