コインに刻まれた女王たち
クレオパトラ、エリザベス、マリア・テレジア。肖像と貨幣政策から、それぞれの時代を見ます。
本文を読む目安:約8分
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3分でわかる コインの女王たち
- 絵で見る
- 数字で見る
- あなたならどうする?
- くわしく読む
1絵で見る
横に送って見られます
1 / 9
コインの顔は、本人が生きているうちに本人の名で打たれた
だから「どう見せたかったか」の証拠になる
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クレオパトラは、鋭い鼻と強い顎の顔を刻ませた
伝説の美女ではなく、力ある君主の顔
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ただし「本当の顔」とは言えない。「見せたかった顔」だ
言える範囲に線を引く
4 / 9
1780年
マリア・テレジアの銀貨は、死後もこの年号で打たれた
4億枚
20世紀までに
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商人が欲しかったのは、この顔・年号・重さの銀貨
信用の宛先が、人から型へ移った
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1877年
ヴィクトリアの顔は、インドの村々まで運ばれた
市場が選んだ顔と、帝国が運んだ顔
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エリザベス一世は、落とした銀貨の質を「戻す」側に立った
なぜそう決めたかは、教材からは追えない
8 / 9
明治14年
日本の紙幣に初めて載った顔は、伝承の中の女性だった
顔立ちは、どこか西洋の女性に似ていた
9 / 9
1869年
王の顔が使えないとき、国土の女神が国の顔になった
スペインのペセタ貨のヒスパニア
2数字で見る
13件
女王たちを語る教材の停留所。NOMISMA で最も薄い鎖
4億枚
20世紀までに打たれた、1780年銘のターラー銀貨
3あなたならどうする?
あなたは紅海の商人です。女帝が亡くなって何年もたちました。古い年号のままの銀貨と、見たことのない新しい銀貨。どちらを受け取りますか?
選んでみてください
1780年の年号のままの銀貨
実際の商人たちもそうしました。求めたのは人物ではなく「この顔、この年号、この重さの銀貨」。だからこの銀貨は、死後も同じ年号で打たれ続けました。
見たことのない新しい銀貨
商人たちが信用したのは、見慣れた型のほうでした。信用の宛先が、人から型へ移っていたのです。
死んだ女帝の顔が、200年間、現役のお金であり続けました。お金にとって、時間は必ずしも進まなくてよいのです。
再現画
この講座で、分かるようになること
- 女性君主の肖像が、男性君主と違う扱いを受けた点を説明できる。
- 「死後も打たれ続ける貨幣」がなぜ生まれるかを説明できる。
- 肖像が理想化されているかどうかを、判断する手がかりを言える。
詳しい案内
講座の番号:C13
監修: 葉山 満
本文のほかに、演習10問・コイン2点・読む教材9件 所要時間の出し方
ほかに分かること
- この鎖の材料が薄いことの意味を、自分で説明できるようになる。
- クレオパトラの肖像を「理想化の拒否」として読める。
- 実在の女性と擬人像を区別し、それぞれの系譜を語れる。
この講座は、ほかの講座を読まなくても始められます。
あわせて読むと、つながりが分かる講座(任意)
- コインの絵と文字を読み解く
分かること:一枚の表裏を見て、どの部位に何があるかを指せるようになる。
本文の第7節で、この講座に触れています。
出典の確かめ方を詳しく知りたい方へ(任意)
評価方法
講座内の演習10問(確認7・比較1・記述2)。到達は自己評価で記録します。
この講座の8つの章
- 当人が選んだ像と、後世が作った像貨幣の肖像は当人が発注した証拠。ただし「実際の顔」ではなく「見せたかった顔」。
- 死後も打たれ続けた貨幣信用が人から型へ移ると、貨幣は死者の顔と過ぎた年号のまま通用しつづける。
- 戻した女王 — エリザベス一世「戻す」判断をした君主がいる。ただし NOMISMA の材料では、判断の理由までは追えない。
- この鎖が薄いことを、どう扱うか材料の薄さは、対象の性質ではなく書き手の関心を映すことがある。薄さ自体を問いにする。
- 理想化を拒んだ横顔 — クレオパトラ伝説の美女とは違う、鋭い鼻と強い顎。政治家として刻まれることを、彼女自身が選んだ。
- 村々まで届いた顔 — 女帝と女王マリア・テレジアの顔は時間を超え、ヴィクトリアの顔は空間を超えた。届く力の二つの型。
- 最初の紙幣肖像 — 神功皇后という選択日本初の紙幣の顔は、伝承の中の女性だった。実在の議論ごと、選択の意味を読む。
- 女神たちの系譜 — 擬人像という別の鎖アテナからブリタンニア、ヒスパニアへ。実在しない女性たちが、国家の顔を務めてきた。
読む教材(9)
- ヘレニズム 総論・世界 紀元前30年 クレオパトラ
第1節。理想化されない肖像の記述です - マリア・テレジア・ターラー ドイツ 1741年〜 ハプスブルクの帝都ウィーン
第2節。マリア・テレジア・ターラーが打たれはじめる場面です - オーストリア 総論・世界 後20世紀–現在 今も打たれる
第2節。帝国が滅びても打たれ続ける銀貨の話です - グレシャムと改鋳 イギリス 1560〜1561年 ロンドンの造幣所
第3節。戻す改鋳の場面。同じ時代のグレシャムにも注目してください - 円の誕生 日本 1881年 紙幣寮 彫刻室
第7節。伝承の人物の顔を、彫り手の記憶が決めた記録 - 1868年10月19日 スペイン 1869〜1870年 マドリード、造幣所
第8節。王の顔に代わる国土の擬人像と、国民主権の言葉 - 紙を刷る権利を、国が独占する インド 1861年 最初の券
銀貨ではなく、紙に置かれた女王の顔です。裏づけのない紙では顔だけが値打ちの根拠になること、そして肖像が「インド女帝」の称号より十五年早く流通していたことを見てください。 - 紅海の基軸 オーストリア 19〜20世紀 エチオピア高原
女帝の没後も、その銀貨は異国の高原で標準であり続けました。貨幣の寿命が、発行者の寿命とは別に流れるという一点を確かめてください。 - ロンドンの勅許 トルコ 1856年 ロンドンの事務所
同じ女王が、今度は顔ではなく勅許として現れます。オスマンの名を掲げた銀行の設立を認めたのが英国の女王だったこと——それだけで当時の力の向きが読めます。