NOMISMA SCHOLA
PRACTICE / 判断の手順書

自分の癖を知る四つの問い — 損を避ける・今を取る・群れる・権威に弱い

自分はお金で、どんな間違いをしやすいのか

使う場面 大きな買い物や契約、勧誘の前。年に一度、自分の癖を見直すとき

人の判断は、標準的な経済学が前提にした「合理的な人」から、同じ方向にずれます。2002 年のノーベル経済学賞の発表文は、この系統的なずれを示したカーネマンの研究に触れています。ずれには型があるので、名前を付けて先に知ることができます。癖を直す手順ではありません。働く場面を先に知る手順です。

四つの問いと、日本の調査の答え

一つ目。10 万円を投資すると、半々の確率で 2 万円の値上がり益か 1 万円の値下がり損が出る。自分ならどうするか。2022 年の金融リテラシー調査では 74.2% が「投資しない」でした。二つ目。今 10 万円をもらうか、1 年後に 11 万円をもらうか。どちらも確実にもらえるとして前者を選ぶ、が自分に「あてはまる」と答えた人は 32.1% です。三つ目。「これが一番売れています」と勧められた物を買うことが多い。「あてはまる」は 4.7% でした。四つ目。肩書きを聞いた瞬間に、確かめる手を止めたことがあるか。警察庁が挙げる手口の筆頭は、警察官などをかたる「ニセ警察詐欺」です。

年齢で見る

同じ調査で、損失回避が強く投資しない人は 60 歳代で 78.4%、70 歳代で 77.9% です。今を取る癖が強い人は 60 歳代 50.7%、70 歳代 59.3%。群れる癖が強い人は 60 歳代 13.4%、70 歳代 11.9% でした。自分の答えを、自分の年齢層の数の隣に置きます。

自分の場合

四つのうち、自分に一番強いのはどれか。その癖が最も高くつく場面(借りる・売る・急かされる)を一つ書き、その場面で「一晩置く」と決めておくところまでが、この手順です。

手順

  1. 損を避ける半々で 2 万円の得か 1 万円の損。断るなら、損の痛みが得の喜びより大きい
  2. 今を取る今 10 万円か、1 年後 11 万円か。前者なら、計画する自分と実行する自分が別人
  3. 群れる「一番売れています」で買うか。並ぶ理由が自分の中に無ければ、群れの癖
  4. 権威に弱い肩書きを聞いて確かめる手を止めたか。権威と急かしは一組で来る

他の国では

OECD/INFE が 2023 年に 39 の国と経済圏で行った調査では、買う前に払えるか考える大人は 70% いる一方、金融商品を複数の提供者で比べる人は 26%、独立した情報源に助言を求める人は 24% でした。金融詐欺の被害に遭った人は 15% で、その約 3 分の 2 は金融知識の最低目標点に達していません。癖は国を問いません。

出典(史料室)

関連する科目と実技

P8 P1 勧誘を受けたときの三手 — 切る・確かめる・話す 詐欺の型帳 — 四つの兆候と、日本で公表されている手口

実技の一覧へ