素材で見るコインと紙幣

CNG coins / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
一枚の実物を、どう見ればよいのか。
この一冊を3分で
- 実物台帳の全点を、素材で分けて並べました。金・銀・銅・紙を見比べる手がかりは六つです。傷みにくさ、持ち運びやすさ、少額で支払えること、同じ単位として扱いやすいこと、供給の制約、受け取ってもらえること。すべてを満たさなければ貨幣にならない、という条件ではありません。
- 図版は台帳の写真だけを使い、所蔵とライセンスを全点に添えました。写真の無い裏面、記載の無い直径と量目は「無い」と書き、作っていません。
- 各章の頭に「この素材の読み方」を置きます。素材から見て、形を見て、印を見て、年と出所を確かめる。順は毎章同じです。
- 一点ごとに、実物データベースのページと、その実物が登場する航路の停留所へ導線を張りました。図録は入口で、読む場所は停留所です。
- 巻末に、素材ごとの時代の分布、無いものの数、編ごとの索引を置きます。数はすべて台帳から数え直したもので、この本の刊行時点の値です。
- 台帳は436点。裏面の写真277点、直径の記載80点、量目の記載0点、停留所に登場321点。
目次
- 前この図録の読み方
- 1素材の前と、最初の合金 — 貝・粘土・エレクトロン
- 2金 — 錆びず、柔らかく、高額の支払いへ
- 3銀 — 歴史の大半で主役だった金属
- 4ビロン — 銀の顔をした銅
- 5銅と青銅 — 小額の主役、重さの両端
- 6錫と鉄 — 代用の素材
- 7ニッケルとアルミニウム — 機能で選ぶ二十世紀
- 8紙 — 裏づけがあっても、換えられる速さが要る
- 後この図録から、どこへ行くか
- 巻末SUMMARY / TIMELINE / DATA / QUESTIONS / DRILL / SOURCES / INDEX / REVISION HISTORY
手に取った一枚を、何から見ればよいのか。この図録は、その順を素材から始めます。金貨、銀貨、銅銭、紙幣を並べると、違いはすぐに目に入ります。金は錆びず、紙は燃えます。銅銭は一枚の値打ちが小さく、大きな支払いには数が要りました。科目 B02 と同じく、この図録は六つの観点で見比べます。傷みにくさ、持ち運びやすさ、少額で支払えること、同じ単位として扱いやすいこと、供給の制約、受け取ってもらえること。ここでは、この六つを比較の手がかりにします。すべてを満たさなければ貨幣にならない、という条件ではありません。素材の量だけで向き不向きは決まらず、地域、時代、用途、発行する人や組織によって、同じ金属の役目も変わりました。
各章は一つの素材です。章の頭に「この素材の読み方」を置き、そのあとに台帳の実物を年代の順に並べます。一点の欄は、名・編と発行地・年代・素材と形・直径・所蔵とライセンス・台帳の記載・登場する停留所・実物データベースへの導線です。裏面の写真が無いもの、直径の記載が無いもの、量目の記載が無いものは、その旨を書きます。無いものを作らないことが、この図録の約束です。
読む順は毎章同じです。素材を見る。形を見る(円いか、方形か、塊か)。印を見る(打ち込みの痕か、彫刻の型か、鋳型の文字か)。年と出所を台帳で確かめる。そして、その一枚が登場する停留所へ行く。図録は入口で、読む場所は航路です。
素材の前と、最初の合金 — 貝・粘土・エレクトロン
貨幣の前に、三つのものがありました。数えられ、贈られ、蓄えられた貝。貸借を刻んだ粘土。そして金と銀が自然に混ざった合金、エレクトロンです。中国の航路は、殷や周の墓の子安貝を貨幣と呼んでよいか、いまも決着していないと書きます。市で物と引き換えられた証しが、そう多くないからです。メソポタミアの古い粘土板に残るのは、物々交換ではなく大麦の配分や貸し付けの帳簿です(E1)。
エレクトロンは、塊ごとに金と銀の割合が違いました。見た目が同じでも値打ちが違い、受け取る側は毎回疑わねばならない。この不確かさが、印を打つという発明を呼び込みました。クロイソスがこの合金を金と銀に分けたとき、素材の歴史は次の二つの章へ分かれます。
- 台帳にあるもの
- 3点(総論・世界1・アメリカ1・日本1)。年代の幅は BC 610–560から AD 1945(未発行)。裏面の写真2点、直径の記載2点。
- 台帳に無いもの
- 裏面の写真1点、直径の記載1点、量目の記載は全点。無いものは各欄に「なし」と書き、作っていない。
- 素材が「値打ちを運ぶ」のか「記録を運ぶ」のかを、まず分ける。貝と粘土は答えが違う。
- エレクトロンの色。金だけの黄色と、銀の混じった淡い色の差を、第2章・第3章の実物と並べて見る。
- 印があるか。あるなら、それは装飾か、重さと品位を請け合う宣言か。
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